中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年04月28日
途端に会場はざわめき始めパソコンを開いて速報を送る者、外に出て電話を掛ける者が続出。私も何だか真似したい気になり、隣の日本人記者さんがパソコン開いて本部に速報を送っている間に、日本にいるうらるんたさんに電話。うらさんは即ツイッター上に<速報>と明記、報告。「やったね、日本で一番早かった!」何て、あほな喜びを2人でかみしめた。
上はその後渡された、チベット語リリース。
氏名:བློ་བཟང་སེང་གེ་(ロブサン・センゲ)、出身:ལི་ཐང་(リタン)、現住所:ཨ་རི་(アメリカ)、得票:༢༧༠༥༡་(27,051票)、得票率:༥༥༠༠(55%)、と書かれている。
彼は1968年にインドのダージリンで生まれた。現在43歳。高校までは地元のCST(主にインド政府が援助するチベット人学校)に通う。ダージリンにはイギリス統治時代からの有名な英語学校も沢山あり、チベット人でも元貴族や裕福な家庭の子弟はそこに行く。彼はそこに通った訳でなく難民が安く行ける普通の学校で学んでいる。このことは家庭が特別裕福でなかったことを示している。その後デリー大学に進み、英文学と法律を学んでいる。
卒業後、最年少でTYC(チベット青年会議)の執行部委員に選出されている。その後フルブライト奨学生に選ばれ、ハーバード大学大学院に入学。ハーバード・ロー・スクールに進み、2004年、チベット人として始めての法学博士号を得る。現在もハーバードの上級研究員として大学で働いている。奥さんがおり、子どもも4、5歳の女の子が1人。
ロブサン・センゲ氏の詳しい経歴についてはこちら→KalonTripa2011(英語)
正式にチベット亡命政府の首相に就任するのは8月14日とのこと。
上は選挙管理委員会のメンバー3人。中央が委員長のジャンペル・チュサン。彼は今回の投票は全般的に言って、これまでにない亡命社会全般の熱狂振りも手伝い、成功であったと述べる。投票率は第一回が52%、第二回44%、今回は59%と誇らしげ。もっともこれは日本等に比べても決して高いとは言えないが、、、
国際選挙監視委員会にも査定してもらったそうだ。委員会は「調査のため各地を訪れたが、非常に公正で素晴らしい選挙であった」とコメントしたという。
1つよくない事はネパールの票の内、カトマンドゥ盆地の投票がネパール政府の妨害により結局実施できなかったことだ。もちろんこの裏には中国政府からの圧力がある。カトマンドゥ以外の例えばポカラ等の投票は行われ得票に加えられている。
議員選挙の方は全体44議席の内、21議席が新人で占められた。若い人が多い。女性の新人が6人。この内最年少は29歳のシャルリン・テンジン・ダドゥン女史、TWA(チベット女性協会の広報担当)。グチュスンの秘書であるカン・ラモ女史も31歳の若さで当選している。女性議員は全部で12人。かなり多いと言えよう。
ウツァン地区の議席10の内8人しか今回選ばれていない。これは議員に選ばれるには最低33%を獲得することが条件となっているからだ。もっともこの2議席については補欠選挙が後に行われるという。
記者会見の様子。前に座り込んでもいい。
BBCは今日27日の朝から発表を待たずに、ロブサン・センゲ氏にインタビューした映像を流していた→BBC NEWS(動画)
シーンはアメリカのカーラチャクラ堂の中でサンゲ氏がお経を唱えるとこから始まる。以下要旨のみ。
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質問:チベットは独立国であったという主張には今も正当性があると思うか?
LS:「正当性の問題は結果から見渡すときに語られる言葉だ。例えば、中国のジャスミン革命も今は不可能と見えようとも、いつか結果的に必然と見なされる時が来るかも知れない」
質問:中道路線については?
LS:「誰が首相に選ばれようとも、法王の意思である、中道路線を踏襲しなければならない」
(2008年のチベット蜂起の映像が流れる。)
質問:チベット内地の状況について語ってほしい。
LS:「悲劇だ。非常な悲劇的状況下にある。中国による占領。政治的弾圧。誰であろうと平和的デモを組織する者は逮捕され、獄に繋がれ、拷問を受ける。ほんの3年前2008年に中央チベット、アムド、カムとチベット全域に渡る大々的な蜂起運動が起こった。遊牧民、農民、若者も老人も命を掛け道に出た。そして死んだ。抗議し、撃たれ、逮捕され、拷問を受けた。これらが現実に起こっていることだ」
質問:今もこのような活動を支持するか?
LS:「我々はエンカレッジ(奨励は)しない」
質問:中国はエンカレッジしていると主張するが?
LS:「そんなことはない。エンカレッジしないが、我々は彼らの行動を理解する。彼らのフラストレーション、反抗心を。なぜならば、組織的な差別、弾圧が行われているからだ」
質問:法王は今70歳代だ。彼が亡くなれば、中国は次のダライ・ラマをチベットの中で探し承認するであろう。亡命側にとってこの意味とは?
LS:「チベット人はみんな、私も特に、法王は長寿を全うされると信じている。非常に健康で、おそらくチベットの自由を目撃されるであろう。ではあるが、一方で法王は様々な転生の方法を提案されている。その一つに『マディ・トゥルク』という方法がある。高位のラマは存命中に次の転生者を選ぶことができるというものだ。私はこの考え方を支持する」
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ロブサン・センゲ氏は今日、自身の当選を知った後、早速「感謝のメッセージ」を発表している→Kalon Tripa For Tibet(英語)
この中で、彼は「みんなの期待にできる限り答えることに努力する」とし、「我々共通の願いである、占領下のチベットに住むチベット人たちの苦しみを軽減し、ダライ・ラマ法王の本来の居場所ポタラへの帰還を実現するために、すべてのチベット人とその友人たちが私と共に歩むことを願う」と述べている。
ま、とにかく若者中心に彼への期待は、相当高まっている。法王が政治引退された後、重い責任を背負い、長老たちとうまく折り合いを付けながら、如何に、チベット問題を前進させられるか、これから彼の手腕が試される。
世代交代が進み、新しいイメージとインスピレーションをこの社会にもたらす事は確かであろう。
*当記事はブログ「チベットNOW@ルンタ」の許可を得て転載したものです。