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2011年04月29日
需要側の問題、供給側の問題
需要側を見ると、今年第1四半期の電力消費量は1兆911億キロワット時と前年同期比12.7%に達した。経済成長率9.7%を大きく上回る数値で、鉱工
業の生産が大きく伸びていることを受けたもの。特に全電力消費量の約3割を占める化学工業、建材、有色金属、製鉄の重工業分野の伸びが目覚ましい。
供給側を見ると、今年第1四半期の新設発電機容量は前年同期比234万キロワットも減少した。とりわけ主力となる火力発電に限れば268万キロワットもの
減少となった。風力発電などのクリーンエネルギーの発電量は増えているが、その不安定性などの問題から、1000万キロワットの新エネルギー発電容量は、火力
発電400万キロワットの効果しかないと中電連統計部の薛静主任はコメントしている。
計画経済的インフレ対策がもたらす矛盾
火力発電所の発電容量拡張が思うように進まないのは、温室効果ガス対策で老朽化した発電所の閉鎖が進んだ影響もあると思われるが、それ以上に石炭価格の高騰と電力価格の値上げ抑制のために構造的な赤字体質となっているため。インフレ防止を至上命題に掲げる政府は電力価格の値上げを認めず、発電しても赤字になる苦境に発電所は建たされているという。そのため発電能力拡張をしぶる状況が生まれているばかりか、中には発電を一時中止する発電所まで登場しているという。
先日の上海港コンテナ車運転手ストライキといい、今回の電力不足といい、インフレと計画経済的対策がもたらす矛盾が本格化してきた印象を受ける。今後も一定期間、物価上昇は抑制できないという悲観的な予測が広がるなか、今後もさらに多くの混乱が予想される。
参考過去記事
中国政府の物価対策=社会主義的「伝家の宝刀」で混乱必至(2010年12月2日)