2011年4月28日、浙江省杭州市で第7回中国国際アニメマンガ祭開幕式が行われた(
公式サイト)。席上、優れたアニメ・マンガ作品に贈られる美猴賞も発表された。海外作品部門では「トイ・ストーリー3」が受賞。中国作品部門では「夢回金沙城」(邦題は「夢の王国)が受賞した。2011年4月29日付
国際在線を参照した。
*画像はオープニングセレモニー。初音ミクのコスプレイヤーの姿が見える。公式サイトには他にも多数の写真がアップされている。「夢回金沙城」は2010年7月の公開。米国でも公開され、第83回アカデミー賞最優秀アニメ賞にノミネートされた。ストーリーは現代に生きる少年・小龍くんが3500年前の中国古代文明・金沙国にタイムスリップ。謎の災害に金沙人、動物の神である象神様と一緒に立ち向かうというもの。日本では「
2010東京中国映画週間」で公開された。
中国版もののけ姫?!
予告編を見ると、なるほど背景が美しい。チベットや四川省の九寨溝、江南の水郷をモチーフに美しい自然を描いたという。ただ、似たような背景のアニメを見たことがあるような……。ああ、ジブリの「もののけ姫」に似ているんだなどと思いながら予告編を見ていると、もののけ姫にでてくるオオカミの神モロに似ている白虎が登場。と、その後には言い訳できないぐらいダイダラボッチにそっくりな巨人まで出現していた。
中国ネット民の検証
中国でも「もののけ姫」はよく知られた作品ですので、さすがに検証する人も相当数いたようだ。「もののけ姫だけではなく、ラピュタからのパクリもあるんじゃね」との指摘。中でも比較画像を載せていたネット掲示板の書き込みを紹介する。
・モロと白虎(上がもののけ姫、下が夢の王国)
・ダイダラボッチと巨人
・巨大飛行石と謎の宝石
・シータと小龍
パクリじゃない!リスペクトだ!
ちょっと面白かったのが中国公開直前の2010年7月5日に粉絲網に掲載された記事だ。
先日、広州で試写会が行われ、多くの観客が同作に魅了された。その美しさは高く評価され、日本の大監督・宮崎駿の名作「もののけ姫」を想起させるとたたえられた。ただし「途中のストーリーがばらばらで、明らかにもっさりしている」との声も。同日、陳徳明監督も一部のシーンは「宮崎駿そっくり」であることを認め、制作チームの大監督に対するリスペクトのスタイルだと語った。
「パクリじゃない!リスペクトだ」というのは常套句のようだが、中国ではむしろかたくなに認めないケースが多い印象。陳監督は率直に認めているが、素直だと称賛するべきか、「もう少しばれないようにリスペクトしてください」と言うべきか。
また、画面の美しさは評価されながらも、「ストーリーがもっさり」とかなり残酷な評価を得ているのもトホホと言えるのではないか。
総制作費10億円、興行収入1000万円
ちなみに粉絲網の記事「
2010年中国語映画キーワード9:国産アニメ」によると、興行収入はわずか100万元(約1250万円)。「総制作費8000万元(約10億円)」のうたい文句からすると、さびしすぎる結果ではなかろうか。同記事は「国内では興行収入100万元という惨敗、海外ではアカデミー賞ノミネートという栄誉」という皮肉な結果だったと論評している。
さて「喜羊羊与灰太狼」(
日本語ウィキペディア)のように大ヒットしたアニメ映画もあるのに、なぜ「夢の王国」は栄誉ある賞を獲得できたのだろうか。中国国際アニメマンガ祭は、「中国」という名を冠しているものの実は毎回、杭州市で開催されているイベント。そして「夢の王国」の制作会社は杭州の会社であるというあたりにその謎が隠されているような気がするが……。
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