中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年04月30日
安い労働力を求めてきたはずが……日系企業の悩み
物価の急上昇が続くと同時に、労働者自身もより良い生活を目指している。そうした環境下で賃上げ圧力が高まっています。安い労働力を求めて進出した日系企業がそうした要求にどう対応しているか。これが同作のテーマでした。
何社かの企業を取材していましたが、メインはホンダの子会社である八千代工業株式会社です。現地社長が通訳を交えてとはいえ、たった1人で工会(労働組合)の代表者と賃上げ交渉をしている姿は、見ているだけで胃が痛くなりそうな光景でした。
会社の言い分、労働者の言い分
より安い価格での納入を求められる子会社。また、これまでも相当額の賃上げを実施してきています。そこに追い打ちをかけるように東日本大震災が発生し、部品が調達できなくなったことによる減産や減収という打撃も受けています。経営者としては、何とか賃金を現状維持にとどめたいでしょう。
片やより高い賃金を求めて内陸部からやってきた労働者としては、将来のために学費を稼ぎたい、親に仕送りしなきゃならないとお金は必要。となれば、1元でも高い賃金を望むのは道理です。
圧巻はなんといってもストライキのシーン。減産により残業代が減り、不満の高まっていた労働者らは突然、職場放棄します。最初は一部門だけでしたが、たちまち他部門にも波及。全部門で操業がストップし、最終的に会社は200元の賃上げを飲みました。
撤退できない日系企業の事情
番組ではこれ以上労働者が辞めないようにと、会社側が芸能人を呼んで慰安のショーを催すエピソードも紹介されていました。こうした人たちが頑張ってくれているから、今の日本経済が成り立っているのだと痛感しました。
そんなに大変ならば中国から撤退すれば良いのではないかとと思うかもしれません。しかし、すでに多額の投資をしているというだけではなく、親会社が中国に生産拠点を移した以上、下請けとしては勝手に撤退するという選択肢はありえません。
苦しい中でも生き残るべく、新たな取引先として中国企業との契約を目指す会社や、あるいは更なる設備投資で乗り切ろうと選択する会社など、単なるきれいごとでは片付かない「日中交流」が描かれた番組でした。日系企業は、ある意味、中国の目まぐるしい変化に翻弄された被害者といえるかもしれません。
しかし、親会社の中国移転というやむにやまれぬ事情はあったのかもしれませんが、最終的には自分たちで決めたこと、誰を恨むこともできません。こうした苦しい状況でも、利益を出していかなくてはならない。企業に勤める者の悲哀を感じました。
今後、中国経済はより大きな変化に直面すると私は予想しますが、その時、日系企業はどうなるのでしょうか。仕事をしていた人々はどう対応していくのかのでしょうか。考えただけでまた胃が痛くなりそうです。
*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。