ビンラディン殺害に対する中国の反応2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件の首謀者として行方を捜していたウサマ・ビンラディン容疑者を殺害したと発表しました。この発表を受けてアメリカでは、市民がワシントンのホワイトハウス前に集まり、歓喜しているそうです。
WaPo: U.S. forces kill Osama bin Laden / justgrimes【画像】歓喜のホワイトハウス前 - 写真 (時事通信社) - livedoor ニュース9.11がアメリカにどれだけの苦痛を与えたかを考えれば、アメリカ国民のこうした反応も理解できます。しかし、何故ウサマ・ビンラディンがあのような行動をおこしたのかを考えると全く違ったものが見えてきます。そうしたビンラディンの行動に理解を示すのが、中国で「憤青」(憤怒青年)と呼ばれる過激な書き込みをする(「愛国主義」)者達でしょう。彼らが今回の殺害をどのように見ているかを通して、少しこの問題を考えてみます。
*当記事は5月2日付ブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。
過激な書き込みといえば何と言っても『環球網』。オバマ大統領の演説を報じた記事に書き込まれたコメントを列挙します。オバマ大統領の声明発表の記事に付されていたコメントです。
本当のテロリストはアメリカだ。アメリカが世界に憎しみをつくりだしている。1人の英雄が倒れても、千人の、万人の英雄が育っており、こうした世界中の英雄がビンラディンを支持している。最大の独裁者は誰か、(キリスト教の)神である。何故なら他の神(精霊)の存在を許さないからである。
最大のテロリストは誰か、アメリカとヨーロッパである。何故なら彼らが存在することによって、ロシアのような軍事大国でさえ、侵略の危機におびえなくてはならないからである。
1人の英雄が倒れても、千人の、万人の英雄が育っており、死刑執行人は対価を支払わなくてはならない。
最大の死刑執行人はブッシュとオバマだ。
何故こうした書き込みを通じて、ビンラディンへの哀悼の意を示しているのでしょうか。最大の理由はアメリカの押しつけに対する反抗かと思います。「人権」問題などに対する中国のロジックとしては、欧米のいう人権(価値観)だけが全てではないというのが、典型的な反論パターンです。
例えば、イスラムには伝統的なイスラム法的慣習があります。それは欧米の価値観から見ると、人権侵害と映り、様々な問題を引き起こしています(フランス国内におけるイスラム教の女性が全身を隠すために着用するブルカについての制限など)。中国も基本的に同じ発想で、中国には中国のやり方(価値観)があるのだから、欧米の価値観を押しつけるなと主張しているわけです。
「愛国主義」に染まった「憤青」も基本的には同じような発想です。だからこそ、こうした自分達の価値観を無理矢理押しつける欧米に対する反感からアメリカに反旗を翻したビンラディンに対する尊敬へとつながるわけです。
ビンラディン容疑者がすでに水葬に付されたと報道されておりますが、ある意味こちらの記事に対する書き込みの方がビンラディンに対する愛着が見て取れるかもしれません。
私はビンラディンを愛する。アメリカの敵ということは自然と中国の同盟国となる。
オバマは再任を果たすためにこのようなことをしたのだろう。狂犬が!私はビンラディンを愛する。
アメリカ人はどうして24時間以内にビンラディンを海葬にする必要があったのか。ビンラディンは本当に死んでいるのか、空城の計で敵を欺いているのではないか。
どうして皆に見せないのだ。
これこそビンラディンが死んでいないことを説明している。
死んだというニュースは嘘だ、信じたい思いが見て取れます。
最後に
『環境網』が行っていたインターネット調査を紹介して終わりにしたいと思います。(5月2日20時30分現在)
1.ビンラディンを殺害することによって、アメリカが安全になるか?
なる 185票
ならない 4178票
わからない 608票
2.アルカイダはアメリカに報復をするか?
する 4135票
しない 151票
わからない 685票
3.今後世界中のテロはどのようになるか?
増加していく 3297票
減少していく 413票
わからない 1260票
*当記事は5月2日付ブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。
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