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「日本語の『さん』って呼び方は良いよね」便利な敬称を羨む中国人オタク―中国オタ事情

2011年05月04日

日本語の「さん」って呼び方は良いと思う中国オタク

中国オタクと日本語についてはイロイロなことがあるようですが、ありがたいことにそれについて「中国オタクは日本語の一人称の多さや関西弁などに苦労しているという話を聞きますが、敬称についてはどうなんでしょうか?」という質問をいただいております。

中国語では日常的な関係の場合、相手の名前を呼ぶときは基本的にそのまま名前だけで呼びます。日本語で「誰々さん」や「誰々くん」と呼ぶような状況でも、「誰々」とだけ呼ぶわけですね。

さん

ただ、もちろん中国語でもそれほど親しくない相手や仕事上の付き合いの相手などの場合は敬称や役職つきで相手を呼んだりします。比較的広い範囲で用いることができる上に多く使われるのは「先生」と「女士」でしょうか。英語の「Mr.」「Ms.」と似たような感じです。

*当記事はブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」の許可を得て転載したものです。

日頃私が巡回している中国のソッチ系の掲示板でその辺の認識や反応などを調べてみましたので、今回はその辺について少々やらせていただきます。それでは以下、例によって私のイイカゲンな訳になります。


日本語の敬称ってちょっとめんどくさくないか?日常的に使うなら「さん」をつけておけばいいんだろうけど、アニメや漫画では呼び方でキャラ付けされてたりもするからたまに混乱する。


「ちゃん」なんかはわりとキャラ付け的なところもあるから理解するのも楽だよね。中国語でが一応ネタ的に音訳した「醤」をつけることもあるし。
(訳注:「醤」の中国語発音は「jiang」になります)


敬称じゃないけど「あずにゃん」を「梓喵」と訳したのはかなりうまいやり方だと思う。
(訳注:「喵」は中国語の猫の鳴き声で発音は「miao」になります)


日本だとそれほど親しくない場合の呼び捨ては失礼になるらしいね。また友人同士でも年齢差が有れば「さん」をつけて呼んだ方が安全だって聞いたことがある。


アニメや漫画のなかで日本の学校は上下関係が厳しく、上の学年の人間には必ず「先輩」と呼び尊重しなければならないというのを知ったとき、日本の学校はなんてめんどくさい所なんだろうと思った。ただ、よく考えてみたら中国の学校では学年間の交流なんてほとんど存在しないのに気づいた。そして、そもそもそんな問題に出会う機会すらないということにも気づいてちょっとガッカリしたことがあるなぁ。頼りになる年上の先輩というのには今でもちょっと憧れている。


そういえば日本語の「君」というのをそのまま中国語の「君」と訳すのは実はちょっと違うんだよね。日本語の「君」って口語でも使うけど、中国語だと文章みたいな感じになる。


漢字が同じだからって、意味や語感まで完全に同じってわけじゃないからな。安易な訳は失敗する。昔「キャプテン翼」で全部のキャラが「君」で呼ばれているバージョンの翻訳があったが、かなりカオスなことになってた……、試合の緊張した空気がおかしな感じになってしまっていた。


日本語の一人称はめんどくさいけど、敬称はそこまで気にしないで良いと思うよ。とりあえず上下関係を把握しておけば間違いないし。


てか中国語でも敬称は結構めんどくさいときあるぞ。名前で男性か女性か判断し難い場合、電話で担当者を呼び出してもらうときやメールのあて名とかで「先生」と「女士」のどっちを使うかで迷うことって少なくないぞ。


最近よく感じるようになったんだが、日本語の「さん」っていいよね。男女どちらにも使えるし、日常生活から仕事まで全てカバーできるからとても便利。ウチの国の人間の名前って男女の区別ができない人結構いるから、そういうときに「さん」みたいなのがあれば便利だと思ってしまうよ。


相手に肩書きがついてればそれでOKだけど、それが無いと姓+肩書きという呼び方できないから難しいよね。普通にフルネームで呼ぶと失礼に思えるし。日本人は「さん」という最終手段があるからこういう苦労をしないんだろうなぁ……。


最近ウチの国では「老師」が使い易いと思う。男性女性どっちでもOKだし、言われた方も悪い気はしないし。
(訳注:中国語の「老師」は日本語で「先生」の意味になります)


中国語の「老師」って学校や教育関係者ならともかく一般にはそこまで使われていないんじゃないか?あと日本語の「先生」も男性女性の区別が無いから、「さん」に比べると用途の範囲は狭いけど使い易いね。中国語の「老師」と同じような教師的な立ち位置の人や、文化活動をやっている人全般に男性女性関係なく尊称として使えるのが楽。


私も最近は初対面の人やフルネーム呼ぶのはちょっとマズイと思う相手には「老師」って使ってるな。嫌味にならないから空気が悪くならない。「師傅」も使えるけどあっちは技術者の意味が混じるから、「老師」の方が相手も気分良いよね。


初対面だと名前だけで呼ぶわけにはいかないことが多いからめんどくさいよね。役職が分かっていればそれ使えばいいけど、こっちで把握している役職と現在の役職が違ったりすることもあるしなぁ。敬称にしても「先生」と「女士」で最低限男女は判断しないといけないし。


とりあえずエライ方の役職や立場を想定して言っておけば問題ないんじゃね?「経理」とか。
(訳注:中国語の「経理」は日本語の支配人や経営者といった意味になります)


俺は下っ端だから連絡相手も現場の人間かせいぜいその上ってのが多いから、あんまり上の呼び方をすると混乱するわ。小売り業者相手ならまあいいかもしれんが、企業の人間相手だとイイカゲンな呼び方はできんよ。


伝統的な「同志」とかどう?


昔は「同志」で全て良かったらしいけど、ウチの国が資本主義路線を走り出してからは違ってきている。


てか「同志」は今だとゲイの意味があるからうかつには使えん!


なんかもう、最近の中国語と社会の変化が大きくて疲れる……。普通に相手を尊重しようと「您」を使って話しても相手によっては皮肉に思われるし、「同志」はゲイになってるし!
(訳注:「您」は中国語の基本的な二人称の「你」の敬称バージョンです)



仕事の関係とかめんどくさいよね。呼び方も増えているしそれによるめんどくさい摩擦も出ているような気がする。俺の周りは工程師(エンジニア)が多いから「工」をつけて呼ぶことが多いけど、その人の姓によってはへんな意味が出てくるからなぁ


日本の「さん」は非常に使える敬称だというのは認めざるを得ない。男性女性、クラスメートや友人などに上下関係や老若関係なく使え、更には相手へある程度の敬意まで示せる。正直ちょっと年上の人とか女性でそこまで親しくない相手とか、どう呼べばいいか迷うときが少なくないよ。「哥」や「姐」で呼ぶほど親しくないときとか結構困る。
(訳注:中国語の「哥」と「姐」は同年輩から少し年上の人相手に使われることが多い呼び方で、日本語では「~~兄さん」「~~姉さん」というのが近いでしょうか)



中国では普通の関係では敬称つけたりしないし、日本語の敬称込での呼び方はめんどくさいと私は思っていたんだけど、最近ちょっと考え方が変わってきた。「さん」を含む日本語のやりとりは、ある方面においては中国よりも便利に思える。現在の中国では初対面や上下関係のある状態でのやりとりでは「さん」ほど汎用性のある失礼にならない呼び方ってないよね。最低限男女は判別しないといけないし。


中国も昔は「字」(あざな)があって、それが礼儀の上で活用されていたんだが今はもう使われなくなってしまったからな。中国語には日本語の「さん」にあたる言葉が無いということがたまに恨めしく思えたりする。

とまぁ、こんな感じで。何やら敬称に関しては中国オタクの面々も苦労しているようです。そしてそういったことからか、日本語の「さん」という敬称の使い勝手の良さに感心しているような所も見受けられました。

それにして言葉の意味や社会関係が変化してきたことにより、中国語の敬称や呼び方の使われ方も変わってきているようですね。特に「同志」などは昔の中国では非常に安全な呼び方だったのが、今では裏の意味を持ってしまって使い難くなるなどというのは昔は想像もしなかったことでしょうし。

またそんな昔とは違う状況になってきているということで、「さん」などの日本の敬称についてイロイロと考えてみるような中国オタクが出たりもしているのでしょうね。

とりあえず、こんな所で。例によってツッコミ&情報提供お待ちしております。

*当記事はブログ「「日中文化交流」と書いてオタ活動と読む」の許可を得て転載したものです。

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