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2011年05月08日
中国経営網は4月23日、記事「『中国一の慈善家』陳光標氏の謎を解明=その真相を掘り起こす」を発表し、陳光標氏が「中国一の慈善家」になった「からくり」を暴露したのです。
寄付金額の水増し疑惑、入札の為の売名行為?
記事は、「陳光標氏が2010年に行った3億元(約37億2000万円)超の寄付のほとんどに、あいまいな点が多数存在している。寄付された団体が元々存在していなかったケースさえもあった」と報じています。この記事が本当ならば、同氏は「中国一の慈善家」という称号を得るために、寄付金の額を水増ししていたということになります。
さらに、陳光標氏が経営する建築解体企業・江蘇黄埔再生資源利用有限公司は、同氏の慈善行為に伴って拡大を続けたと指摘しています。中国経営網の取材に応じたある解体業者は、「陳光標は慈善の名を借りて自身の企業に多くのビジネスチャンスをもたらした」と明かしました。つまり「中国一の慈善家」という名を借りて、地方政府の解体プロジェクトに入札すれば、政府も同氏にメンツを持たせざるを得なくなるというわけです。
陳氏の企業の負債状況を指摘
中国経営網によると、江蘇黄埔再生資源利用有限公司はかなり危険な財務状態にあると報じています。2009年時点で、同社の資産総額は1億500万元(約13億円)。一方、負債額は9969万元(約12億4000万円)に達し、負債比率は95%に達しています。
陳光標氏自身も会社の経営状態が思わしくないことを認めており、現時点ですでに半年余り新しい業務を受注していないと述べました。しかし会社が苦境に陥っているのは、「現在70%の力を慈善活動につぎ込んでいるため」であり、「現在のたくわえならば、あと2年は持つ」と強気の姿勢を示しました。
記事は、「彼は道徳模範であり、『中国首善(中国一の慈善家)』である。彼が苦境に陥ることを政府は放っておくことはないだろう」との陳光標氏をよく知る記者の言葉を引用しています。
反響を呼び、陳氏みずから疑惑に反論
この記事は発表以来大きな反響を呼んでいます。これ見よがしなパフォーマンス慈善を苦々しく思っていた人は「それみたことか」と批判し、同氏の慈善行為を称える人たちは「そのようなことはありえない。事実だったとしても彼の慈善行為が色あせることはない」と反論したのです。
そのような中、中央テレビが4月25日に放送した報道番組「東方時空」で、陳光標氏は先の中国経営網の記事で提起された数々の疑惑に反論しました。曰く、これほどまでに多くの寄付を続けているのに自分に疑念をいだく人が出てきていることに「悲しい」と吐露。「こうした疑念は慈善事業に対する大きなショックとなる。もし『出る杭は打たれる』という状況なら、今後慈善行為をやろうと思う人が出てくるのだろうか」と述べました。
陳氏の反論に対し、中国経営網記者は番組で、「われわれ経営報記者は彼の寄付行為、彼の思いやり、善意の心を否定したわけではない。私は慈善行為と疑念とは別問題であると考えている」と釈明に追われました。
2011年版「中国慈善ランキング」にランクインせず
4月26日、毎年恒例の「中国慈善ランキング」(中国社会工作協会主催)2011年版が発表されました。2010年の寄付金ランキングが発表されたのですが、昨年、「中国首善」の称号を勝ち取った陳光標氏は、ランク外となっています。
昨年、あれほど盛んに寄付していた陳光標氏がランク外とは不思議としかいえません。あるいは、社会工作協会が現在の世論の雰囲気を読んだのでしょうか……。陳光標氏の苦悩の日々は続くようです。
*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。