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<続報>【中国食品】政府高官専用の「安全農園」があった=潜入取材でスクープ―中国

2011年05月09日

昨日公開の記事「中国で一番安全でおいしい野菜!極秘の共産党幹部専用農場は実在した」で取り上げられていた南方週末の記事「”こっそりと”やる野菜作り」がそこそこ話題となっていたので、かなりの長文ですが全訳してみました。

記事は、「税関ビニールハウス」という北京税関自らが運営する農場への潜入取材と、政府機関ご用達食品の制度、歴史に関するまとめという構成です。


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食品安全問題が深刻な中国だけに、「共産党幹部は専用の安全な農場で生産された食物を食べているのではないか」といううわさが、以前からまことしやかにささやかれてきました。

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*ネットで広まった中央国家機関特別提供品センターの写真。

2008年にはいわゆる「祝咏蘭」問題が取りざたされました。中央政府の官僚に安全な食料品を供給するための専門政府機関「中央国家機関特別提供品センター」が2005年に設立され、祝咏蘭が主任に就任したという噂がネットで流された、というもの。そんな政府機関は存在せず、祝咏蘭という名の官僚もいないと政府が否定するほどの騒ぎとなりました。

2010年秋には、第一財経日報が政府機関、さらには大手国有企業が独自に農場を経営。幹部向けに供給していると報じ、注目を集めています。また、記事中でも紹介されているとおり、「政府特別提供酒」などと銘打って宣伝している製品もあり、「特別提供」そのものは公然の秘密状態。その意味において、南方週末記事のポイントは、「特別提供品の存在を暴いた」というよりも、「実際に北京税関の農場に潜入取材した」という部分にあるのではないか、と。

また、不足に感じた点もあります。制度や歴史についても触れていますが高官向け食堂や政府主催パーティー向け食料品、大躍進時期など食糧不足の時期に政府高官向けに確保されていた農場と、相当数の政府機関職員に提供される食料品などがすべて「特別提供」だとしてまとめているため、異なる性格を持つものが一緒くたにされているようにも思います。

とはいえ、「エアロビ豚」「染色マントウ」「メラミン汚染粉ミルク復活」と大型食品安全事件に注目が集まり、中国政府が「食品安全がらみの報道規制を導入しようとしている」などと噂されている中で、大きなインパクトを持つ記事だったことは間違いないでしょう。


”こっそりと”やる野菜作り(南方週末、2011年5月6日)


あれが「税関ビニールハウス」ですよ

2メートル以上もある壁と鉄柵に四方を囲まれ、入り口は5人のガードマンに守られている……。もし、現地住民が教えてくれなければ、この「税関ビニールハウス」を見つけることは難しかっただろう。まして、ここが北京税関専門の野菜生産農場であるなどと知るよしもなかった。「税関ビニールハウス」は正式名称を「北京税関野菜基地・郷村クラブ」という。面積は200ムー(約13ヘクタール)余り。北京市順義県李橋鎮王家場に位置する。

関係筋によると、同農園は北京税関と契約してもう10数年以上になるという。生産された野菜はすべて北京税関に提供される。毎週月、水、金の朝、コンテナ式のトラックが野菜を受け取りにやってくる。毎回の出荷量は最低でも数トンになるという。「税関ビニールハウス」は無数にある政府機関専門の特別提供食品提供農場の一つに過ぎない。調べによると、順義県には税関以外に全国各省級政府機関の特別食品農場が集まっている。

これら特別食品農場が生産する農作物こそ、本当の意味での「緑色食品」と言えるだろう(緑色食品とは、安全な環境で育てられたことを認証する中国独自の制度)。とりわけ安全面が配慮されている。2011年5月1日、南方週末記者は厳重に警備された「税関ビニールハウス」へと進入することに成功した。

入り口を抜け花壇を通り過ぎると、高級住宅によく似た受付ロビーが見える。その大きなガラス窓の中には、いけすが見えた。あたりは緑が一杯で、果樹園には桃や梨がもう実を付けていた。

内部には64棟ものビニールハウスがずらりと並んでいる。ハウスの入り口は作業員用の部屋になっており、簡素な寝具と椅子とが備え付けてある。壁には「野菜生産における農薬使用の安全間隔期間」という掲示が貼られていた。その技術指導は順義県栽培業サービスセンター基準化弁公室によるものだった。

2棟ずつ東西に並ぶビニールハウスの中間には、排水口が南北に走っている。また、中間には中型トラックが走行できる舗装道路があった。野菜出荷に用いられるという。一部で東北地方出身者が働いている以外は、全従業員が現地の農民だ。通常、1人の従業員が4つのビニールハウスを管理する。責任者がいない場合にはハウス入り口に鍵がかけられる。

農業業界では、「農民は自分で作ったハウス野菜は食べない」と噂されている。ハウスの野菜は農薬と化学肥料を多く使用するためだというのだが、「税関ビニールハウス」の従業員たちは、「絶対に問題はない」と胸を叩いて保証した。「全部、私たちが植えた野菜です。絶対的に安心です」、と。ある従業員がまだ花がついているキュウリをもぎ取り、洗ったり毛を落とすことなく、そのままかぶりつく。記者はそんな姿を目にしている。

化学肥料による汚染を防ぐため、ほとんどの野菜はニワトリ、ブタ、牛、羊などの糞から作られた有機肥料を使用している。農薬を使う場合で自然農薬が使われ、また農薬噴霧後の安全期間を守るよう注意されている。「安全期間が過ぎないうちは、たとえ腐り落ちようとも収穫しない」のだとか。「栽培されているのは汚染されていない一般野菜です」と農業関係者は紹介した。一般野菜とは、キュウリ、茄子、トマト、セイヨウカボチャ、豆角(ササゲ)、キャベツ、空心菜、アブラナなどを指す。「我々が育てたものは何であれ、税関がすべて引き取ります」と話している。


北京市以外にもある政府機関専用特別提供食品

実は「税関ビニールハウス」は政府機関専門食品の一例に過ぎない。またこうした食品は北京以外の地域にも存在し、その種類も果物や野菜以外に及んでいる。

特別提供食品の典型的な形式は、地方政府のある機関が専門の農園を確保するというもの。その農園で生産された野菜はすべて政府機関の食堂に納品される。ある匿名希望の研究者が明かしたところによると、2年前、同氏が陝西省高級人民法院機関食堂で食事をしていると、同行者が専門農園の存在を教えてくれたという。同法院が持つ専門農園は西安市から30キロにある戸県にあり、専門のスタッフが絶対に汚染や危険がないよう管理しているという。

陝西省などではたんに野菜を栽培しているだけだが、広東省のある政府機関が持つ農園はさらに進んでいる。十数年前から付近の農民を雇用し、野菜栽培、養豚、魚の養殖、ニワトリやアヒルの飼育まで行っているという。

もし、専門農園が確保できない場合には、その政府機関は信頼できる食品提供業者を選択することになる。本誌記者は、中国各地の「北京五輪緑色産品」提供企業103社に電話取材して知ったが、一部企業は五輪に食品を提供したのみならず、現在でも政府機関と親密な関係にあるという。

北京アジア大会(1990年)、北京五輪(2008年)の両大会で、タマゴの提供を請け負った北京留民営新世紀養殖場の孫氏によると、中国共産党北京市委員会は専門家を派遣し、養鶏場の水源、飼料、空気を検査。基準に合致したことを確かめた後、市政府機関との直接取引、中国政府首脳への提供が始まったという。すでに10年以上も続いているが、飼料や飼育に関する条件は通常とは大きく異なる。また、きのこ生産企業である北京興特合作社は2008年に北京政府旗下の事業単位と2~3カ月間の提供契約を交わしたという。

タマゴを生産している山東省臨沂市三益禽畜有限責任公司の劉・行政主管は、2004年よりいくつかの現地政府機関と提携し、毎年200~300トンを提供していると明かした。同じく山東省にあるアヒルの塩漬けタマゴを生産している微山湖荷花食品有限公司。秦家懐・総経理によると、国務院のある部局に製品を提供しているという。契約関係を結んですでに10年になるという。

湖北神舟健康食品有限公司技術サービス部の汪経理によると、同社製品は一般の市場に出荷されるほか、中国共産党湖北省委員会の食堂に毎週1回、ウズラのタマゴを納品している。1回あたり数十点。納品をはじめ、3~4年となる。


”こっそり”の農園、”大々的に宣伝される”製品

政府機関専門食品特別提供制度の歴史は長い。中華人民共和国建国後初となる「特別提供」の報告書は、1960年7月30日にまでさかのぼる。中国共産党中央は、斉燕銘・元国務院副事務局長による報告書『北京在住高級幹部及び高級知識人に対する副食提供方面への配慮問題に関する報告書』を転送しているが、その際に「副食に関する配慮」を「特別需要提供」に変更している。これ以来、「特別提供」は人々の羨望の的である神秘の言葉となった。

2007年、北京市二商局幹部の高智勇氏は過去を振り返るコラムを執筆している。同コラムによると、「特別提供」の事務に関する幹部と職員は商業局から選ばれていたが、警備担当幹部や検査担当スタッフは公安部8局が任命した北京市公安局のスタッフで占められていたという。信頼できる政治思想を持ち、出身身分や家族も選抜審査の対象となった。同時に選ばれたスタッフは中央政府が定めた「特別提供」政策と組織の規律を守るばかりか、同時に”対象”(中国共産党高官)の好みを研究し、合わせることが求められた。

地方誌の『北京誌商業巻・飲食サービス誌』電子版の「第4章・管理」には「特別提供」に関する記録が残されている。各中国共産党中央部局は重要な会議や外交活動を展開する時、「特別提供」品を採用。政治的配慮に基づき、絶対に安全でいかなる事故も起こさない、高品質のサービスを原則としていた。

多くの特別提供基地がひそやかに運営されているのと好対照に、近年、特別提供製品の多くがメーカーの「売り文句」となっている。

2007年8月27日、北京市政務ポータルサイト「首都の窓」は『王忠海副区長、特別提供農作物状況に関する調査研究を実施』という記事を掲載した。記事中、「施設栽培イチゴ、波龍堡ワイン、葡萄酒、平湯渫(多分キノコ)、白霊菇(キノコ)、「卓辰」ブランドのドライエージング牛肉と羊肉、宏利ブランドのアヒル、長陽葡萄などの農作物は国家機関に特別提供製品に選抜された」と記載されている。北京市房山区のある政府機関を取材した結果、記載は事実だと確かめられた。

また今月にはサイト「投資北京」の記事「80ムーの土地=北京のボルドー」を掲載。波龍堡ワインは北京五輪提供酒、そして政府機関特別提供酒に選ばれたことを紹介している。


「安全、品質、速度、秘密を保証」

関係筋が明かしたところによると、北京市西山のふもとにある巨山農場こそが国家高級官僚用野菜の主要供給地だという。

巨山農場は首都農業集団保有の農場。首都環境保護区である西山のふもとにある。西は八大処講演、北は香山、東は玉泉山を望む、風光明媚にして空気がきれいな公害のない地域だ。農業部及び北京市環境観測センターは農場の自然環境を観測したところ、水質、空気、土壌の品質はいずれも国家規定の優良水準と認定された。

特別提供野菜の生産に長年たずさわっている、ある関係者によると、政府機関食堂以外に、一部官僚が自宅で食べる野菜も順義区順沿特別提供野菜基地で作られているという。

調べによると、その基地は北京市有機野菜栽培のモデル農場とされている。国家基準委員会が「国家農業基準化モデル区」に指定。また政府高官も視察に訪れたことがあるという。

上述の関係者によると、生産された野菜は週に一度、出荷される。その量は計14品種、数十キロに達する。うち10種がキュウリ、豆角(ササゲ)、茄子、トマト、セイヨウカボチャ、キャベツ、空心菜、アブラナなどの一般野菜。他にサクランボ、オクラ、ロマネスコ、レッドキャベツなど、3~4種類の高級欧風レストランやホテルでのみ見られる特殊な野菜も出荷される。「基地の農作物に問題は起きたことはありません」と上述の関係者は話した。品質を保証するため、農業部は陝西省や山東省など他地域の検査機関を呼び寄せ、相互検査させている。それ以外に区や県の農業関連機関、品質検査関連機関もたびたび検査を実施しており、いかなるミスをも見逃さないよう注意している。

また農場内部のすべての野菜については、人口管理同様の詳細な記録が付けられている。「いつ種をまいたか。誰が苗を育てたか。いつ苗を植え替えたのか。誰が農薬を噴霧したのか。どの程度の期間、農薬を使用したのか。農薬噴霧後の安全器はいつからか。誰が収穫したのか……などなど。記録が後の検査用にまとめられています。」

本誌記者が入手した「特別需要農作物品質安全(企業)年度評価表」によると、生産環境、生産過程、製品の品質などの過程において、「どれか一つの決定的な管理ポイントが不合格になれば、特別需要農作物製造資格を取り消す」と明記されている。

「特別提供」農作物の品質管理に便利なよう、北京市農業委員会は2002年9月、「特別提供」農作物の直接管理を専門とする新部局・北京市特別需要農作物サービスセンターを開設した。部局の格は正処級。各区・県農業委員会の主要担当者が品質安全の主要責任者を指定。その自治体で生産される「特別提供」農作物の組織、連絡、管理を担当し、「安全、品質、速度、秘密」を保証する。

また、特別提供製品には淘汰制度も導入されている。2004年7月5日、北京市農業委員会は『北京市特別需要農作物品質安全監視制度実施弁法(試行版)の通知』を発行しているが、同通知の第8条には、氏tpくべつ需要農作物サービスセンターは、特別需要農作物の生産機関について、リアルタイムの管理を実施。専門家による評価を毎年、実施。2年連続で合格基準に達しなかった機関は特別需要農作物供給資格を失うと定めている。

特別提供製品に対する要求は厳格だが、取材した農家たちはそれでも選ばれることを希望していた。「もし、選ばれれば、それはたんに名誉というだけではなく、リソースとなるのです。今後、生産した作物が売れなくなると言う心配がないのですから」と話している。



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