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2011年05月10日
10年前に比べ人数は約10倍、中規模都市への流入も
第一財経日報の取材に応じた新疆社会科学研究院の吐爾文江氏は、新疆出身の浮浪児問題は10年前と比べても、その規模や範囲から見てもエスカレートしていると警告を慣らします。
新疆未成年児童のかどわかし、誘拐について継続的な調査・研究を行っている同氏によると、10年前と比べて、北京、上海、広州、深センなどの大都市ばかりか、中規模都市にまで浮浪児が流入するようになったと分析。中には5、6都市を転々とした浮浪児もいたと指摘しました。一方で浮浪児の流出地は10年前と同じで、カシュガルやホータン、アクスなど新疆南部が中心だと言います。
新疆出身の浮浪児は、10年前の3000~6000人から、現在では3万~5万人にまで膨れあがったと同氏は推計しています。
4月に政府は保護、取り締まりの強化を実施
このような状況について、政府も手をこまねいて見ていたわけではありません。民政部と関係部門は4月19日、新疆出身の未成年を保護する活動を共にしっかり行うよう全国の民政部門に指示を出しました。新疆ウイグル自治区の民政庁もそれに伴って緊急プランを作成。未成年浮浪者の受け入れから生活、教育、医療、心理カウンセリング、帰郷などの各種段取りを行いました。
今年の4月26日には、新疆出身の未成年を誘拐して操る違法犯罪を取り締まる全国特別キャンペーンに関する実務会議が南昌で行われ、張新楓公安部副部長が会議の席上、「各地公安機関は新疆の未成年を誘拐して違法犯罪に駆り立てる背後の組織者を厳しく取り締まり、彼らを解放するように」と述べ、これらの取り締まりを徹底するよう呼びかけました。
このキャンペーンに従って、全国で新疆出身の児童や未成年が保護され、新疆へと帰されることとなり、メディアも彼らを大々的に報じました。
浮浪者対策は米国へのアピール?
実のところ、都市部で年々増加しているストリートチルドレンの問題については、今年3月の全人代会議でも民政部の高官が言及しており、さまざまな措置を講じて彼らの救済を考えていく旨を表明しています。このほかにも各関係部門主催による、児童の誘拐や人身売買取り締まりに関する会議が開催されていますが、効果が上がっているとはいえません。
そのような中、新疆ウイグル自治区の児童に限った救出キャンペーンの報道が、4月に入ってから急に多くなりました。突然新疆出身の児童の救済について各メディアが報じ始めたわけですから、「なぜ今頃新疆の児童を……」といった疑問を持たざるを得ませんでした。
実のところ、今年の4月と5月は中国にとって微妙な時期でもあります。4月27、28の両日には、北京で中米人権対話が開催されました。先の新疆出身の浮浪児の問題は、中国の国内の人権擁護の姿勢をアピールする絶好の材料になったことは間違いないでしょう。米国が重要視している新疆に絡んでくる問題ですから、なおさらと言えます。
5月9日と5月10日にはワシントンで中米戦略経済対話が開催されます。先の人権対話で人権問題については十分討議されたはずですので、今回の対話で人権問題について討議される可能性は低いでしょう。しかしそれでも、継続的に人権擁護の姿勢をアピールするには、いいチャンスになるはずです。
新疆出身の浮浪児救済については、一過性のもので終わりにしてほしくないと私は強く感じます。
*当記事は5月9日付ブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。
これって民族浄化だよね。