中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年05月10日
留学生が校内で女子大学生を強姦するNTR(寝取られ)もののエロマンガを連想させる痛ましいニュースです。このニュースはボクがネットで簡単に検索しただけでも、豆瓣(中国版SNS)や百度貼度(百度の掲示板)、そして微博(中国版Twitter)でも当然ながら話題になっています。
5月7日の晩、江西中医学院の女生徒が実験楼で留学生に強姦された。彼(原文ママ)の男友達も当時その場にいて数人の外国人に押さえ込まれ、自分の女友達が目の前で犯されるのを見せられた!学校は事を穏便に解決させるため古臭い手を使い、公費で保研(大学院入試の免除待遇)したが、その女生徒は既に頭がおかしくなってしまっていた。保研が何になるんだ?現在学校は情報封鎖している。
ソースがないまま一人歩きする情報
しかしどこのサイトを開いても情報ソースが出て来ません。書き込まれるのは脊髄反射的で感情的なコメントと詳しい情報を要求する懐疑的な発言です。けれども各サイトで原文がリツイートされていくうちに、「この女生徒は中医学院の15棟に住んでいる。ただ情報公開者のプライバシーを守るため名前や経歴は明かせられない」といった詳しい情報がいつの間にか判明します。
そして外国人や留学生への不満や、「うちの大学でも起きたよ」という第三者の実体験など本事件を補強する怪情報がゾクゾクと現れます。ですが相変わらず確証のある事実は出て来ません。
学校側の調査によりデマであることが判明
9日の午後5時になるとニュースサイトも動きだし、今回の事件の一連の流れを説明する記事をネット上に掲載しました。そこで学校側が調査した結果、事件は全くのデマであるということが明らかになりました(*参照ニュースサイト「西部網」)。
発端は9日の昼12時ごろに、“南昌同城会”という微博ユーザーが“多人微博爆料”というユーザーからのタレコミを微博に公開したことです。 元々多くのフォロアーを抱えていた“南昌同城会”のツイートはネット上に広まり、微博だけでも同日の16時半までに8792回リツイートされました。
しかしいつまで経っても真相が明らかにされず証拠も出てこないので、9日20時に当該コメントは削除されました。
アップルストア騒動への意趣返し?無責任な書込みがはらむ危険性
報道の通りこの強姦事件はデマだと思います。少なくとも嘘であってほしい一件です。強姦事件が起きた5月7日という日付から想像を飛躍させれば、同日7日の土曜日に北京で起きたアップルストア外国人店長、テンバイヤーに棍棒ぶん殴り事件の意趣返しに思えます。
(記事「中国でもiPad2発売に大行列=混乱にキレたストア従業員が転売屋を殴打―中国北京市」参照)。
しかし多くの中国人ネットユーザーは今回のニュース、そして各サイトに書き込まれた多数のコメントを見て、かつて外国人留学生が中国のどこかで実際に起こした事件があったと記憶するんじゃないでしょうか。
最後に“南昌同城会”の微博トップページに掲載されている紹介文を翻訳して転載します。
140文字の深さで南昌(江西省の省都)内の大小の事件を、はっきりと一から十まで正しく報道します。360度の広さでニュースやグルメ、娯楽、遊び、珍しさ、おもしろさを発掘します。皆さんからの個人的な暴露をお待ちしています。彼からしたら今度の騒動は、義憤に駆られて結局釣られてしまった単なる失敗に過ぎないかもしれません。しかし加害者のみならず被害者のプライバシーまで暴露する恐れのあるタレコミは、真的假的に関わらず慎重に取り扱うべきだったでしょう。