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おいしすぎる中国の道路利権=交通違反の罰金は警察や地方自治体の収入に―中国コラム

2011年05月13日

物価高の原因を探る

原因を探るといっても、私ではなく新京報がやってくれたんですが。

交通違反の罰金乱用を暴露、徴収した金は地方財政に組み入れ=領収書が不要なら罰金の減額もOK(2011/5/12 新京報)

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新京報の報道。

上記の表は、内モンゴル自治区から河南省南陽市西峡県まで、石炭を30トン車で運ぶ場合のコストを示したものです。

*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。

運賃:
1万350元(約12万9000円)

輸送業者のコスト:
道路通行料:1600元(約1万9900円)
燃料費:5000元(約6万2200円)
運転手給与:給料900元 (約1万1200円)
食事代(3日分):450元(約5600円)
積み降ろし費用:200元(約2490円)

利益:
2200元(約2万 7400円)
*車の維持費や車検費用は含んでいない。

この利益をさらに削り取っているのが罰金です。過積載の罰金が多く、1回あたり100元(約1240円)から300元(約3730円)が科されます。月に3000元(約3万730円)から7000元(約8万7100円)を支払うケースもあるのだとか。

河南省で運転手の権利擁護活動に従事する王金伍さんは、「“三乱”は本当に酷いままだ。中国全体での罰金徴収額は4千億元(約4兆9800億円)近い」と推定しています。


罰金不正徴収を体験レポート

罰金徴収の実態やいかに。記者は内モンゴル自治区から河南省へ向かうトレーラーに同乗して確かめる事に。

正午過ぎ。内モンゴルから陝西省に入ったところにある料金所を過ぎた辺りでトレーラーが故障。料金所近くにある休憩エリアで修理することに。午後1時半頃、路政係員(道路管理行政員)がやって来る。違法駐車だとして罰金を言いわたされ、免許を取り上げられる(本来ならば、一時的でも免許没収は交通警察にしか権限がない)。

罰金は1時間あたり300元(約3730円)。修理が遅れれば、総額1000元(約1万2400円)は超えるだろう。正規の休憩エリアに駐車しているのになぜ罰金を支払わなければならないのか。運転手はさっぱり理解できない様子。運転手は関連部門に電話で確かめたが、「路政係員が所属する企業は成立したばかりで、まだ多くの条項は不明確なまま」との答え。不明確なのに、なぜ罰金を取られるのだろうか。

午後4時半。トレーラーの修理はまだ終わらない。係員がまた来て、罰金900元(約1万1200円)を請求する。ただし、実際の徴収額は600元(約7470円)でいいという。そのかわり、領収書は渡さないとのこと。大変な違法行為だ。しかし結局、運転手は600元を手渡し、領収書をもらわずに免許証を返却してもらっていた。

陝西省銅川市。ある運転手によると、「付近の高陵県交通警察は、24時間罰金を取りまくっている」と話していた。そこで記者は国道210号に向かった。ここには交通警察と道路運輸管理局の取り締まりポイントが並んでいる。取り締まりポイント2カ所はわずか200メートルしか離れていない。そこを通ると、交通警察は100元(約1240円)、道路運輸管理局は60元(約747円)の罰金を徴収した。

渡された交通警察の処分決定書を見ると、過積載が罰金の事由としてあげている。しかし、この罰金徴収は規定違反だ。2009年、公安部が公布した『交通警察道路執勤工作規範』は、「過積載の疑いがある場合、車両を施設まで運び、重量を測定しなければならない」と定めている。今回の取り締まりポイントでは重量測定などなかった。明らかに『規範』に違反している。


全く改善されていない「三乱」


この後も、記者は終点まで乗り続けます。毎日最低でも罰金100元(約1240円)を徴収される始末。以前から問題視されている「三乱」が全く改善されていないことが浮き彫りとなりました。

「三乱」とは、無許可での(1)料金所設置、(2)罰金徴収、(3)諸費用徴収を指す言葉。領収書や切符を発行しないのが特徴だそうです。国務院は1994年に「三乱」禁止の通知を公布していますが、例によって全く守られていないのが現状です。

徴収された料金や罰金はどうなるのか。まずは全額が上級機関に納付されます。その後、徴収額の60パーセントが交通警察側に還付されるとのこと。残る40パーセントは地方の財政収入となります。

運転手の権利擁護活動に従事する王さんは、河南省鎮平県で行われているスピード違反取締りを例に挙げて「三乱」の実態を説明しています。規則違反の、カメラを隠してのスピード違反取締りを続けているそうで、「8回にわたり抗議したが、今も続いている」とのこと。

他の運転手にも協力してもらい、計200枚以上の罰金通知書を集めましたが、平均128元(約1593円)の罰金が徴収されています。1日100枚として計算すると、年間で460万元(約5726万円)になる計算。その40%が県の財政収入になるのですから、止めようはずがありません。


もう一つのリポート

新京報だけではなく、都市快報も同様の体験リポート記事を掲載しています。

石油業界や不動産業界以上に暴利な道路会社業界(2011/5/12 都市快報)

こちらで紹介されているのは、広東省から遼寧省への長距離輸送。

輸送費:2万7500元(約34万2300円)

燃料費:8080元(約10万1000円)
通行料金:8978元(約11万2000円)
諸経費諸々
差し引き、運転手の手元に残るのは7000元(約8万7100円)前後。ただし、遼寧から広東に戻ってくる場合は買い叩かれて2万1000元(約26万1000円)にしかならないので、持ち出しになることもあるとか。


道路会社の利益率は職種別でNO.1


中国では輸送費に占める通行料金の割合が日本の2倍という高さ。ゆえに道路会社は利益率20%から50%とぼろぼうけしています。その利益率は金融や保険、不動産業など他のぼろ儲け業種を押さえ堂々の1位。これもすべて道路会社が“勝手に”設置した料金所のおかげ。

先日、上海市で起きたコンテナ車運転手によるストライキとは少し背景が違いますが、違法な料金徴収や罰金で困っているという点では長距離トラック運転手も同じ境遇にあります。企業努力で吸収するにも限度があり、燃料費を超えるほどの負担を強いられ続ければ、最後には物価に跳ね返ってくるでしょう。

4月度の消費者物価指数が前年比5.3%と発表されたばかりですが、状況が改善しないならまたストライキが起きそうな予感がします。

*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。

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