中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年05月14日
海外志向を強める少林寺ビジネス
その釈永信氏ですが、2010年8月1日に少林寺が世界遺産に登録されて以降、ますます少林寺の商業化を加速させています。最近では海外重視の姿勢を強めているようです。
2011年の1月8日、9日に開催された第8回文化産業新年フォーラムでのこと。釈永信氏は、「重点を主に海外におくようになった。少林寺の僧侶は英語、ドイツ語、スペイン語を用いて、現地で活動している。海外で成長して初めて、中国国内での発言権が得られる」と話しています。現在、少林寺はベルリンやロンドンなどに40社余りの企業を直接経営していることまで明かしています。
さらに、「海外で資金を得たら、現地で土地を買う。さらに金がたまれば不動産を購入したい。そうすれば、現地に溶け込むことことができるだろう」とも述べています。
*少林寺周辺で進められている土木工事。鄭州晩報の報道。
釈永信氏は、中国初となるMBA資格を持つ僧侶。ビジネスに積極的なことも、まあ少しは理解できます。しかし少林寺の「方丈」という職位を笠に着て、暴走し少林寺を私物化するような振る舞いは賞賛できないものであり、異論も当然だともいえます。
違法工事疑惑
4月28日付の鄭州晩報は、「最近、多くの観光客が、『少林寺の脇で建築工事が始まっている』ことを明かした。ある観光客は『世界遺産登録後は地域内に勝手に建設を行ってはいけないのでは』と本新聞社に問い合わせてきた」と報じました。
現地を取材すると、確かに少林寺の西側100メートル足らずのところに、青いバラックがありました。現地関係者に聞くと、「小吃(スナック)」を売る売店だそうです。さらにその西側200メートルほどの場所では、基礎工事が行われていました。現場関係者によると、三ツ星ホテルの建設中だそうです。
これらの違法行為に少林寺が関係しているのではとの疑念が浮上しました。4 月29日、釈永信氏は新華社の取材に応じ、「周辺の施設は少林寺とは無関係だ。本院は環境を損なう建築物を目にしたくはない」と関係を否定しています。
売春疑惑
そして5月、さらに驚くべき報道がありました。「河南省のポルノ摘発キャンペーンで、釈永信氏が買春容疑で逮捕された。警察とともに行動していた現地記者が目撃した」との噂がマイクロブログで広まったのです。
5月8日、少林寺公式ウェブサイトは声明文を掲載。「ネットで伝えられている釈永信氏に関する負のうわさは、全くの誹謗中傷である。釈永信方丈の名誉を汚すものであり、少林寺と釈永信方丈は遺憾の意を表明する」と抗議しました(*中国新聞網の報道)。10日付大河網によると、少林寺サイドの要請を受け警察が捜査を開始したとのこと。今後、デマを発信したマイクロブログユーザーの逮捕などに発展する可能性もあります。
消えない疑念
公式サイトで声明を発表したとはいえ、完全に疑念がはれたわけではありません。売春騒動以降、釈永信氏本人による釈明はないことも疑いを募らせる結果につながっています。また、これまでの不信感もうわさの信憑性を強めるものとなりました。
中国初のMBA僧侶・釈永信氏、その”暴走”は今後も続くのでしょうか。仏の道に精進すべき僧侶が、俗事に手を染める愚かさに気づく時は果たしてやってくるのでしょうか。
*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。