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大同市政府、温家宝の「強制立ち退き禁止通知」を無視=凶悪地上げを敢行―中国コラム

2011年05月20日

国務院通知の翌日に立ち退き強制で晒し者に

日本にも行政代執行というのがありますが、ちゃんと昼間にやってくれたりと中国と比べると優しいというか、生ぬるいというか。中国だと寝込みを襲われることもしばしば、です。

20110520_clearout
RFAの報道。

さて、山西省大同市で、また注目される強制立ち退き事件が起きました。17日午前1時、大同市魏都大道の住民が、突如数百名の武装集団に襲われたというもの。

大同市で強制立ち退き民衆の抗議止まず(2011/5/18RFA)

*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。


これ自体はよくある(よくあってはいけないんですが)事件の1つに過ぎないのですが、タイミングが悪過ぎました。


政府通達を無視し行われた解体作業

強制立ち退きについては、ちょうど事件の前日、中央政府の省庁である国土資源部が、「ひどいことはしてはならない」緊急要求を出したばかりでした。

国土資源部が緊急通知強制立ち退きによる民衆弾圧防止要求(2011/5/16新京報)

「立ち退きさせる場合は十分な補償をし、政策について民衆の意見を聞くこと」「立ち退きに対する指導監督を強化すること」「立ち退き地域の農民の利益を守ること」「立ち退きに際しては法に基づいて行うこと」を各地方自治体に求めたもの。

大同市政府は、その通知を完全に無視。夜中に二重ドアを破って家具を持ち出し窓ガラスを割るなど大暴れ。国務院、そして国務院トップの温家宝の面子は丸潰れです。


業者に責任を押し付け弁明

大同市が深夜の強制立ち退き認める=衝突による死者は否定(2011/5/19財経網)

現地責任者である大同市南郊区新旺郷共産党委員会の陳佃朋委員は深夜の強制立ち退きは事実だと認めたものの、「解体を請け負った業者が、立ち退き手続きが完了した別の住宅を解体する際、間違えて手続きがまだ済んでいなかった78世帯で作業してしまい、住民の不興を買ってしまった」と弁明しています。

続けて、「昼間に解体作業を進めると衝突になるので、解体業者は軽率にも夜間にドア撤去作業を行った。この事件に関して、解体業者に妥当性が無く、今も住む住民を感情的にさせた」と発言。業者を尻尾きりに使っています。

さらには「業者に抗議し、責任者に謝罪させる」と他人事モード全開。ネットで出回った流血事件の写真や公安と住民との衝突については、「そんなことはなかった、デマだ」と強弁しています。まさか普通に取材を受けるなんて想像もしていなかったんでしょう。

夜中に追い出された住民に対しては、破壊された窓ガラスや家具、水道、ガス、電気などは速攻で直しますとの大盤振る舞い。そもそも話し合いが済む前から水道やガス、電気を止めるという荒行を行っていたことが問題で、たんなる現状回復に氏食い内わけですが。


意味をなさない政府通達

この手の強制立ち退き事件といえば、RFAなど海外メディア中文版や反体制メディアばかりが報じて、中国メディアはスルーというのが通例。今回は中国メディアが大々的に報じる事態となりましたが、温家宝の逆鱗に触れて晒された、といったところでしょうか。

もちろん温家宝が真剣に現状を憂いて、中央の命令を聞かない末端の責任者を叩いている、という美しい構図ではありません。

2010年5月に国務院弁公庁名義で、2011年1月に国務院名義で、3月に中央紀律検査委員会名義で、4月には再び国務院名義で、それぞれ土地収用にする規定が通達されています。それでも5月9日には江蘇省で抗議のため住人が焼身自殺したりと、強制収用は止まりません。

通知が出た翌日には、「緊急通知など効果は無い」(劉子孺・弁護士)と指摘されていますが、「地方政府が勝手に立ち退きを決定し」「司法手続きを踏まない」現状を何とかするのが先なのです。それまでは、何度通知を出しても同じ事です。

*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。


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