中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年05月20日
“自発的”な検査で発覚
徳清県の報道を見て不安に感じたのが臨江鎮の住民たち。同鎮にも電池工場があるためだ。今月7日より村民1468人を対象に血液検査を実施したところ、136人の血中鉛濃度が基準値を超えていた。うち59人は鉛中毒と認定される水準に達していたという。
連絡を受けた紫金県政府は電池工場の操業停止を命じ、企業代表を刑事拘留している。また、血中鉛濃度が基準値を超えた住民に無料治療を提供することも約束している。19日には河原市政府が緊急会議を開き、全鉛蓄電池製造企業、重金属排出企業、鉱滓ダム(鉱石精錬時に発生したくずを保管しておく施設)の調査及び問題企業の閉鎖を決議した。調査は6月29日までの1カ月間実施される。
怖いのはスイカの爆発ではない
スイカ爆発事件など、ネタ的に面白い、インパクトがある事件ばかりが注目を集める傾向にあるが、むしろ鉛やカドミウム、亜鉛、ヒ素などの重金属汚染のほうが、より大きな現実的リスクと言える。
2007年には米国で販売されている中国製玩具の塗料から鉛が検出され、国際的な大問題となった。鉛害の問題が広く認知され、世界的には「無鉛化」がトレンドとなっているが、中国ではいまだに安価な鉛が使用されているケースが多い。
急性症状を引き起こすケースこそ少なくないものの、鉛はさまざまな慢性疾患を引き起こす。特に子どもに対しては、少量でも神経障害など後遺症も残る深刻な被害を与えるもの。今回、住民たちが”自発的”に検査を行わなければ事態は明るみにでなかったわけだが、いまだに知られていない鉛汚染地域が無数にあるのは間違いない。
”爆発スイカ”などよりも、よっぽど喫緊の課題のはずだが……。