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4割引、5割引は当たり前!ネット書店の猛威にさらされる従来型書店―中国

2011年05月23日

「もし、いろんな名目をつけての値引き競争を続けて、市場をかき乱すのならば。もし、卸価格をかき乱す策略を続けるのならば。君たちに書籍を供給する最大のサプライヤーである我々は、この2日間に発生した悪質な価格事件を理由に、君たちとの関係を断つ。詩人らしい怒りっぷりだ、などと勘違いしないで欲しい。」


Inside world's biggest book store / Robert Scoble


上記は詩人としても知られる北京磨鉄図書有限公司の沈浩波総経理が中国の大手ネット書店に対して発した警告だ。沈総経理の警告に中国少年児童出版総署など児童書籍出版社24社が呼応し、ネットショップの値引き行為に抗議した。2011年5月23日付中国文化報が伝えた。


児童節の値引き合戦

6月1日の児童節を控え、大手ネット書店は値引き競争を繰り広げている。中国のネット書店は当当網とアマゾンの子会社・卓越アマゾンが二大巨頭だったが、昨年末にショッピングサイト・京東商城も参入。競争が激化している。特に今回の値引き合戦は史上空前の激しさとなった。あるネット書店は8割引という脅威の価格を打ち出している。

接力出版社の白冰編集長によると、通常、書籍の卸価格は60%前後。それ以下の価格で販売する、赤字覚悟の値引き合戦が横行しているが、一種の不当競争だという。あまりの値引きに恐れをなした、従来の書籍問屋が返品してくるケースまであったという。


衰亡する書店

低価格を売り物にシェアを拡大するネット書店を前に、実店舗を持つ従来型書店は劣勢に立たされている。全国工商連合会書業商会の統計によると、ここ10年で書店数は半減したという。利益率の低さ、高騰する地価と店舗家賃、ネット書店の安売り攻勢がその要因だと分析する。

一般書店だとどんなに値引きしても4割引、学術書などでは2割引が限界だが、ネット書店は平気で4割、5割と値を下げてくる。大型書店はさらなる売り場拡張による品揃え強化で対抗しようとしているが、結局はネット書店に対する優位点を持ち合わせていないとある専門家は分析する。

「実体店は転換を図る必要があります。特徴あるサービスを打ち出し、顧客により多くの体験をあたえなければならないのです」とその専門家は指摘した。
また、業界関係者の多くは、勝者のない悪質な価格競争から業界を守る法整備が必要だと話している。

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日本でも書店業界の苦境が伝えられていますが、再販制度がない中国ではよりシビアな状況となっているようです。ただネットの普及する前から書籍流通のインフラが整備され多くの中小書店が栄えていた日本と違い、中国の書店業界はもともと脆弱だったという問題も大きいでしょう。

書籍流通が未成熟だった中国では、南方で出版された本が北方では手に入らない、本の取り寄せが難しいなどなど多くの問題を抱えていました。図書城と呼ばれる大型店も増えましたが、日本の紀伊国屋やジュンク堂などとは比べるべくもない貧弱な品揃え。ネット書店が普及した今は、読書家にとってはある意味、天国のような状況とも言えるかもしれません。

もちろん、書店が担っていた「本と読者の出会いの場を提供する機能」が失われてしまうという問題は日本も中国も共通しています。そうした点を強化した新たな書店像が生み出せるのか。日本以上に追い込まれている中国のほうが、より積極的に取り組み、いち早く新たな書店を作り出すような気もします。


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