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「菅政権はもう持たない」中国に足元を見られた日本の首相―政治学で読む中国

2011年05月24日

中国側に足元を見られる菅総理

中国では、本当は自分たちの意見を主張したいのに、直接論説記事を掲載すると角が立つと考えるためか、当該国メディアの記事を紹介するという形式をとることがあります。

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中国新聞網の報道。

『環球網』の記事「日媒称菅直人政权失去邻国信任 中韩拒与日谈敏感问题」(日本メディア、菅直人政権は隣国の信任を失ったと批判=中韓は日本との敏感な問題についての対話を拒否)が、まさに典型です。また、菅内閣には確かに失望させられることが多すぎるので、これについて少し触れます。

*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。


読売の記事を引用し菅外交を批判


引用されたのは、『読売新聞』の記事です。

中韓首脳、求心力失う菅政権と距離…懸案棚上げ(読売新聞、2011年5月23日)

日本を公式訪問した温首相は当時の鳩山首相との会談で、ガス田条約交渉の早期開始を自ら提案、合意した。その2日後、鳩山氏は辞任を表明し、温首相はメンツをつぶされた。日中関係筋は「あれで民主党政権への不信感が高まった。中国側は今も苦渋を忘れずにいる」と語る。
という一段を大変うまく活用しています。最後の一文を「中国側にとって、今に至るまで忘れられない”教訓”となった」と翻訳。主語を中国側にすることで読者に共感を持たせる、うまい手法を採っています。環球時報には引用されていませんが、『読売新聞』だけでなく『産経新聞』も、今回の会談で中韓との懸案に言及できなかった菅外交を批判しています。

語らぬ菅首相「韓国議員の国後訪問」「竹島問題」難問あるのに…(msn産経ニュース、2011年5月22日)

ただ、こうした記事はやはりどの媒体が報じたかが重要でしょう。『読売新聞』や『産経新聞』が報じただけならば、「またか」ですませられますが、中国共産党系の『環球網』が引用したとなると、ちょっと意味合いが異なってきます。


「菅内閣は長くない」、中国サイドの判断

『人民網』が政府の公式見解だとすると、その旗下の『環球網』は、ガス抜き的な意味も含め、もっと過激な意見を載せる傾向があります。その分を差し引いたとしても、まともにこの記事を読めば、菅首相と日中関係を話し合っても、いつ辞職するかわからず、何の意味もないと中国サイドが判断していることがうかがえます。

今回同様、日本メディア報道を引用して、菅首相の辞職を示唆する記事を、中国メディアは何度も報じています。『中国新聞網』の「日本震后政局:首相下台论四起 菅直人深陷困境」(日本震災後の政局=あちこちから巻き起こる首相辞任論=苦境に立たされた菅首相)や、「民意调查显示日本7成民众期望首相菅直人下台」(世論調査:70%が菅首相辞任を希望)などがその例です。


安心は出来ない輸入制限緩和


菅首相自身は、中国の輸入制限の一部緩和表明をもって、首脳会談の成果だと考えているのかもしれませんが、輸入禁止措置が解除されたのは山梨と山形の2県にすぎません。

また輸入禁止地域以外の食品に対しては、放射性物質に関する安全検査証明書を不要とすることを取り決めましたが、中国では現場、今回の場合は税関の対応(規定の運用)で取り扱いがまったく変わってしまいます。ですから、実際の運用を見るまで過度の期待をすべきではないと思います。

外交とは国を代表する政治家が自国の国益の拡大のために他国と交渉することだと私は考えています。しかし、中国に足元を見られている菅首相が成果をあげられるとはとても思えません。その意味でも彼のとるべき道は1つしかないと思うのですが、どうでしょう。

*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。

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