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<続報>iPad生産工場爆発事故に情報隠ぺい疑惑=新華社記者の取材を妨害―中国コラム

2011年05月24日

情報統制はフォックスコンの圧力か

そうじゃないかとは思ってましたが、やはり報道管制があるようです。

フォックスコン大爆発=新華社の取材が妨害される(2011年5月22日、星島日報)

新華社に妨害、ではなく新華社も妨害されたというものです。

20110521_foxcon
*写真は新浪視頻の動画より。

事故発生の翌21日、成都工場の周辺で取材をしていた成都支社の苑堅主任が、微博で「交通警察の制服を着た3人にカメラを奪われた」「記者を押し倒し、カメラが壊された」とツイート。

*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。


見えてこない事件の全容

現地で取材をしていた別の記者の微博によれば、成都宣伝部門の幹部が取材を妨害していたとの証言が得られていますし、地元四川省では続報が報じられていません。ツイートもまもなく削除されています。

今回の事件については、情報源が新華社の報道に限られています。他の中国メディアはほぼ転載のみ。この状況は現在も続いていますが、肝心の新華社も取材妨害を受けているためか、それともまだ事件の方向性が定まらないので公表できないのか、ともかく続報は「地元当局は事件を重視している」と伝えるのみ。

なお、重傷だった1人が亡くなり、死者は3人となっています。


研磨工程は一時中止、一部区画で操業再開

爆発元である研磨加工場、さらには研磨に類する作業は停止しているとのこと。ただ従業員への連絡はなかったのか、爆発翌日の21日も出勤しようとしていた工員が警戒線の中に入れず、警官に「今日は仕事は無い」「帰れと通知が出ている」と追い返されたと伝えられています。

ちなみに今月初頭、国家安全生産監督管理総局は、「粉塵爆発防止業務に関する通知」を公布。要求する基準に達していない工場は生産を停止して設備投資するよう求められています。

では、問題の工場は生産停止するのかと思えば、そうではないようです。爆発のあった北側研磨加工工場は生産停止していますが、事故現場から離れた南側の工場は、原因がはっきりするまでは生産を再開しないと一度はアナウンスがあったものの、23日からは生産を再開すると従業員に連絡がありました。


爆発の原因はなにか?

「研磨加工では大量の粉塵が出るが、工場内には集塵装置がある。アルミの粉塵がたまり過ぎた原因はわからない」との作業員の証言もあります。わずか76日間という突貫工事で作り上げた成都工場の設備に問題があるのでしょうか。

フォックスコン成都ipad生産ライン爆発、アップルに責任(IT商業新聞網、2011年5月23日)

爆発が起きたA05棟は、フォックスコンの加工工程の中でも、最も人体に有害で、毎月300元(約3780円)の手当がついても誰も志願しないという危険地帯だったそうで。粉塵が舞いまくっているというわけではないのでしょうが、300元程度では割に合わない危険があったのは確かなようです。


フォックスコンと地元政府の結びつき

爆発事故後、フォックスコングループのトップ、郭台銘・董事長が現地入りしました。なんと成都空港には、四川省のお偉方がお出迎えしたそうで。劉奇葆・省党委書記は事故現場入りしてますし、蒋巨峰・省長は台湾訪問中だったので、副省長や成都市長らが馳せ参じたのだと思われます。

フォックスコンは昨年四川省に工場を建設し、雇用と税収面で地元に大きく貢献している企業です。お偉方による出迎えを見ても、また事故直後、車で移動中だった郭氏が成都市高官に直接電話し、事故の適切な処理を依頼していることを見ても、政界へのパイプの太さがうかがえます。

地元に多額の税金を落としてくれる大企業・フォックスコン。もし同社から現場の封鎖や事故処理、報道管制などの要請があれば、四川省政府も成都市政府もむげにはできません。

地元政府以外との関係でいうと、アップルをはじめとする、フォックスコンに製造を委託している企業からのチェックをどうかいくぐっていたのかも謎です。そして、粉塵爆発を起こすようなお粗末な管理体制の企業と、これからも付き合いを続けるのかも、まだ見えてきません。


学生研修生酷使疑惑も取りざた

学生工員は工員なのか、職業訓練校に捨てられた子供達か(中国網、2011年5月23日)

フォックスコンをはじめとする製造業メーカーが、職業訓練校から未成年を含む学生を実習名目で受け入れて、給与面でも労働環境面でも過酷な条件で働かせていることが取りざたされています。

フォックスコン以外にも受け入れ企業はあるようですし、派遣だけして何も勉強させていない職業訓練校側にも問題がありそうですが、わざわざ名前を出されているフォックスコンとしては追い討ちを食らった形です。

今回の爆発事故で、企業イメージに大打撃を負ったフォックスコン。このまま騒ぎが拡大すれば、党中央から突然、トカゲの尻尾切りされてしまいそうな予感もするのですが……さて。

*当記事はブログ「
中国という隣人」の許可を得て転載したものです。


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