ミニスカートで卒業写真「大学生の華やかな卒業写真」というニュースが、中国のネットでかなり話題になっているようなので、これについて少し。
もともとこのニュースを伝えたのは『
華声在線』ですが、その後多くのメディアが転載しています。「惊艳毕业照」と記事タイトルの一部で検索すると、『新華網』『人民網』『環球網』『新浪網』といった大手まで転載していることがわかります。
*華声在線の報道。*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。
外資系キャリアウーマンをイメージ?!オシャレすぎる卒業写真はあり?なし?
写真を見ていただけばわかりますが、36名の女性のうち、7名だけがズボンを着用。残る全員は白いシャツに赤いネクタイ、黒いミニスカートとハイヒールという恰好で統一しています。大都会の外資系企業に勤める女性をイメージしたといったところでしょうか。それなりに色っぽい写真ではあるかもしれませんが、結局はたんにミニスカートをはいただけなのですが、これが問題になってしまうのが中国です。
この写真は5月19日、華南師範大学教育情報技術学院メディア学科伝播学科6組の卒業写真撮影会でのもの。父兄も呼ばれていたそうですが、撮影機材からマイクまで準備され、さながら「記者会見のよう」だったとのことです。
*華声在線の報道。
肩章の政治風刺
もうひとつ問題になったのが、「六道杠」(6本のラインが入った肩章)を着けた卒業生がいたことでした。この肩章は、本来、少年先鋒隊が身につけるもの。大隊長が三道杠、中隊長が二道杠、小隊長が一道杠となっています。
(少年先鋒隊:中華人民挙和国の全国的な青少年組織で、ソ連のピオネールに相当し、おもに課外活動を通じて共産主義を学ばせ、将来の青共団員、共産党員を育成している。Wikipediaより)
なぜこれが風刺になるかというと、最近話題になった「五道杠」にあてつけたものだからです。その「五道杠」ネタを簡単に説明しますと……。
湖北省武漢市に大変優れた少年がいました。3歳から共産党のプロパガンダニュース番組「新聞連播」を見始め、7歳から共産党機関紙『人民日報』を読み始めるという「真っ赤なエリート」っぷり。遊ぶことを好まず、名文を発表してはお金をもらい、しかもその金を老人ホームに寄付するという、かわいげがまったくない少年です。少年があまりにすばらしいとのことで、武漢市は独自の規定を設け、「五道杠」の肩章を与えました。
というもの。
私と同じ感情を抱いた人は相当数いたようで、少年が政治家の恰好を真似している写真などが、ネットには出回り、揶揄されるなどの騒ぎとなりました。華南師範大学の卒業生たちは、大学生の自分たちはもっとすごいんだぞというシャレで「六道杠」をつけたわけですが、一歩間違うと少年先鋒隊を揶揄したことにもなりかねない、危険な冗談でもありました。
若気のいたりが大変な騒ぎに
「若気の至り」と言ってしまえばそれまでですが、この写真がネットに出回ると、すぐにかなりの話題となりました。今では大学の定員数も増え、昔ほど「大学生=エリート」という価値はないかもしれませんが、それでも大学生が政治ネタをやった、本来厳粛であるべき卒業記念写真を茶化したということがインパクトを与えたようです。
最終的にはメディアが記事にして、大手メディアまで転載するほどの広がりを見せたわけですから、彼女たちの心中はおだやかではないでしょう。希望に燃えて社会に羽ばたこうとしている卒業生たち。同時に今は現実社会をよく知らず、さまざまな不安を抱えている時期でもあります。それだけに不安はいっそう大きなものとなったことでしょう。
取材を受けた卒業生たちは、写真はたんなる遊びであり、「六道杠」も現在流行しているジョークに過ぎないと表明。取材を拒否しているそうです。学校サイドも、個人の行動であるとしてコメントしていないようですから、きっとこの事件が早く風化してくれることを願っているのでしょう。
おまけ:中国セクシー卒業あれこれ
このニュースについて、中国人の反応を調べている時、「
風言風語」というおもしろい中国ブログを見つけました。今回話題になった華南師範大学の卒業写真以外にも、オモシロ卒業写真はいろいろあるぞとのこと。セクシーに足を見せている卒業写真を集めています。
*上記画像はブログ「風言風語」より。なるほど、一連の写真をみると、卒業写真のおふざけが結構広まっていることがよくわかります。この程度のネタが話題になってしまうもネット社会の恐ろしい一面だと思うとともに、こういう面で中国は本当に保守的だなと改めて感じさせられました。
*当記事はブログ「政治学に関係するものらしきもの」の許可を得て転載したものです。