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2011年05月28日
違法測量で摘発の日本人、5年間で3件目
国家測絵局は毎年、違法測量・製図事件の摘発状況を公開しています。今年で5年目の発表。ご存知の方も多いかと思われますが、中国では軍事上の理由により、民間で自由に地図を作成、発表することは認められていません。国境や省境などの区画、地名についても国が厳しく管理しているため、正確な情報がなかなか公表されないのが現状です。
そのため、中国で独自に測量調査を行った外国人が、当局に拘束されるというケースが多発しています。その中には日本人による事件も含まれています。2010年2月には、GPSレシーバーを使って、塔城(タルバガタイ)
地区で測量活動を行っていた日本人が、現地住民の通報により摘発されました。
この事件は今回発表された「2010年度違法測量・製図事件トップ10」のトップを飾っています。国家測絵局は、「この日本人は観光・環境視察名義で中国入りし、中国国内の地理座標598カ所を収集した。うち588カ所が新疆ウイグル自治区。塔城(タルバガタイ)地区では、軍事管理地区内の座標85カ所を収集していた」と発表しています。
日本人が摘発されたのは昨年だけではありません。2006年と2009年にも1人ずつ、日本人が摘発されています。発表が始まってから5年、日本人による事件は他国と比べても比較的多い部類に属します。
外国人の測量犯罪を警戒
法制日報の報道によると、国家測絵局の責任者は、外国人による事件多発という現状について、「わが国の総合的な国力、国際的な地位の向上が続くにつれ、海外の一部組織、個人による重要地理情報及び関連情報への注目が高まっている。これが違法測量・製図事件が絶えない、主要な原因だ」と指摘しています。
さらに、この責任者は、「海外の一部組織、個人による合資(合弁)企業、合作企業が、科学研究、視察、観光、登山などの名目で、重要な地理情報を取得するというケースが頻発している。
しかし、捜査範囲の広さ、社会的影響の大きさ、そして政策的要素も大きいなどの要因から、問題の発見、摘発、証拠収集がきわめて困難であり、当局は受動的な立場に置かれている」と話しています。
ある専門家は「地理情報は戦略的資源であり、世界各国はいずれも大いに重要視している。中国の測量・製図部門は、国家安全保障関係部門と共に、あくまで法に基づいてだが、外国人がかかわる軍事関連の重大違法測量・製図事件を摘発していくだろう」と指摘しました(5月12日付楚天金報参照)。
25日、国家測絵局から国家測絵地理信息(測量・製図・地理情報)局への名称変更が発表されました。組織や職責に変更はないのことですが、23日に国家測絵局を視察した李克強副総理は、「名称変更は、測量・製図・地理情報に対する国の支持と期待を示している」と発言。「地理情報の管理を強化せよ」との命令という意味合いもあるのでしょう。
(参照リンク:「国家测绘局更名为国家测绘地理信息局」人民網、2011年5月26日)
軍事、国益という観点から、中国政府は今後も地図管理の強化を続けていくことになるでしょう。
*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。