先日、世界エイズ・結核・マラリア対策基金(世界基金、GFATM)の対中援助凍結問題が認められた。28日、中国衛生部疾病予防管理局の郝陽副局長は凍結は事実だと認めた。凍結期間は3カ月で、中国衛生部は現在、世界基金と問題解決に向けて話し合いを続けているという。
2011年5月29日付京華時報、
22日付ボイスオブアメリカ中国語電子版を主に参照した。
Red Ribbon / Brüssel / achimh
官民パートナーシップの世界基金
世界基金は2002年に設立された財団。G8を中心とした各国から資金を集め、途上国のエイズ、結核、マラリア対策プロジェクトを支援している。国連基金でも民間財団でもなく、官民の協力で運営される組織という特徴を持っている。
個人や企業の出捐による民間財団ではなく、また国連システム内に新たに作られた基金でもなく、官民パートナーシップによる新しいタイプの国際機関と位置づけられており、援助国だけではなく、援助を受け入れる国、企業や民間財団、先進国と途上国のNGO、感染症に苦しむ当事者のグループ、学界、国際機関など、多くの人々の協力のもとに運営されています。
だが、まさにこの特徴こそが中国当局との衝突を引き起こした原因にほかならない。
中国の「NGOモドキ」中国メディアの報道では、「問題は主に中国側と世界基金との間での『社会組織』の定義が異なることにある。中国側の定義は民政部の関係基準に基づいている」というあいまいな説明に濁している。
ボイスオブアメリカの説明は具体的だ。世界基金の方針に従えば、中国は提供されたエイズ対策資金のうち35%を地域社会に密着したNGOに提供することが義務づけられている。しかし、世界基金の報告書によると、実際にNGOに提供された資金は11%未満。さらに資金を提供されているのは、政府が作った「NGOモドキ」であり、地域社会に密着したNGOには一切資金は提供されていないという。
NGOは治安の敵
ボイスオブアメリカの報道によると、資金凍結は昨年11月に決定され、数週間前に実行に移された。これを受け、20日に中国政府と世界基金の会合が開催された。さらなる罰則強化は当面、回避されたものの、問題解決に向けこれから話し合いを続けることになる。
中国当局は、NGOを政府権力に対立するものと見なす向きが強く、国際的NGOの中国への介入に対して強い嫌悪感を示してきたほか、中国国内のNGOに対する妨害や取り締まりを続けてきた。NGOへの資金提供を求める世界基金の要求は、中国政府が至上命題とかかげる「維穏」(治安維持)に抵触する問題なだけに、中国側の妥協は困難と推察される。
報道によると、世界基金は2003年以来、中国に5億3900万ドル(約435億円)を供与してきた。現在は2億9500万ドル(約239億円)の支援プロジェクトが実施中だ。