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<続報>「30日に大型デモ」の情報は釣りだった?内モンゴル・フフホトは厳戒態勢―中国コラム

2011年05月31日

厳戒態勢のフフホト市内

胡春華(内モンゴル自治区党委書記)が本気を出したのが功を奏したのか、フフホト市での大学生デモ参加は食い止めたようです。

デマを信じるなとことあるごとに言い続けてきた党中央ですが、「30日にフフホト市で大規模抗議デモ」との情報をデマで片付けられなかったのは、今回、厳戒態勢にも関わらず内モンゴルの複数地点でデモが発生したこと、そして中国ジャスミン革命最初期に数千人が集まった記憶があるからでしょう。

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VOA中文の報道。

*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。


■デモ情報は釣りだった?

30日のデモについては、中国ジャスミン革命で北米華字ニュースサイト・博訊網がスポークスマンとしての役割を果たしたように、デモ情報を流した南モンゴル人権情報センターによる「釣り」の線もありそうです。ただ、中国ジャスミン革命と異なるのは民族対立が絡んでいる点です。ひとたび漢族VSモンゴル族の構図が出来上がってしまえば、事態はあっという間に拡大することになるでしょう。両民族の対立は根深いものがあるためです。

ともあれ、中国において「釣り」という手法を確立した中国ジャスミン革命の功績は、後世まで称えられることでしょう。


■厳戒態勢のフフホト市



上記動画はフフホト市内の様子を伝える香港のニュース。市中心にある新華広場は、いつもなら子供達が遊んでいる姿が見られるのですが、30日日はご覧の通り規制線が張られ、武装警察が大量に配備されていました。市庁舎前でも武装警察が警戒し、庁舎に通じる道路は封鎖されています。博訊の支持者でもあるフフホト市政府職員によると、30日の警備には市全体で2000人が動員されたとのこと。


抗議活動に特別厳戒態勢のフフホト(VOA中文、2011年5月30日)

フフホト駅前では降り立った乗客の身分証確認が行われ、公安からは「外出を極力控えるよう」求めるショートメールが市民に送られています。問題と見れば通さないそうなので、民族を確認しているのではないかと。


フフホト市に装甲車出現師大生が校門で衝突(博訊、2011年5月30日)

フフホト市内にある大学(内モンゴル大学、内モンゴル師範大学、内モンゴル工業大学、内モンゴル農業大学)とモンゴル語学院などモンゴル族関連の学校は、学長と書記が入り口に教師や学生幹部を置いて一般学生を外へ出さないよう監視。もちろん武装警察も門を塞ぐように立ち並んでいます。

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*上記写真は博訊新聞網の報道。

学内には公安や武装警察の覆面車両が並び、なにか起きれば校門の外にいる警官達をいつでも現場に急行できるようになっていたようです。

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*上記写真は内モンゴル師範大学に掲示された「重要通知」。
「上級より緊急通知を受けました。5月30日はフフホト市内にある全大学を閉鎖します。教師、学生の外出は許可せず学内で授業をします。教師、学生においては遵守されたし。」


■朝から晩まで監視されていた学生たち

博訊の取材に答えた、内モンゴル工業大法学院学生の父親は、「今日(30日)は全員同じ時間に起床し、宿舎前に集合させられ、学校の指導部と班主任(学生の思想などを管理する教師)の監視の下、一列に並んで食堂まで移動。朝食を食べ終えるとすぐに教室へ向かわされた」と、朝から学生がみっちり監視されていたことを明かしています。

同大法学院には100名以上のモンゴル族学生がいますが、彼らだけが狙い撃ちされたのではなく、他民族の学生も同様に「行事」に参加させられたといいます。もちろん廊下や校舎外は教師の監視付き。学生たちは終日教室や図書館に監禁されていたようです。

大学の近くに住むこの父親によると、普段ならお昼ご飯を食べに戻る子供が帰ってこないため電話したところ、辺りを気にした様子で返事も短い言葉ばかりだったとか。

また、学生たちは、「学生諸君。友人や先輩たちは君たちの無事を望んでいる。デモには参加しないように」という文面のショートメールを受け取ったとのこと。差出人の電話番号は見知らぬものだったそうで。デモに参加すれば安全は保障しないという脅しなのでしょう。ただ内蒙古農業大学では、携帯の電波を遮断し、通信できない状態にされていたとも伝えられています。


平和的抗議のモンゴル族数十人が逮捕(VOA中文、2011年5月30日)

学生達はほとんど参加できなかったのですが、社会人が中心となった約1000人のデモ隊が30日午前11時から抗議活動を開始しました。モンゴル族の権利と利益の保護、27日の抗議デモで逮捕された遊牧民約40人の解放を訴えながら、武装警察らが巡回する市の中心部へ向かいました。衝突があったのかは不明ですが、参加した数十人が逮捕されています。

また、デモに参加出来なかったモンゴル族学生たちは、学内にある漢文の書籍を破るなどして抗議の姿勢を表しています。


安定の中での発展(内蒙古日報、2011年5月29日)

デモ前日の日曜日(29日)、内モンゴル自治区共産党委員会の機関紙・内蒙古日報に「安定の中での発展」という記事が掲載されました。デモ不参加を呼びかける内容です。フフホト市内の各大学公式サイトにも転載されており、学生を対象にしていることがうかがえます。

「各民族は団結し、共に繁栄と発展を」と呼びかけつつ、「安定は幸福」「一部の国家は民族紛争や宗教紛争で国家が割れたり経済が衰退するなど目も当てられない」「安定あってこその発展」と、かなり中国ジャスミン革命を意識した文章になっているのが特徴です。ジャスミンへの導火線にしたくないという、党中央と胡春華の思いがストレートに出たのでしょう。

その思いは「一部の地方、一部の企業が民衆の利益を損なう行為をした」という件にも現れており、一連の騒動の発端となったひき逃げを採掘企業にかぶせ、運転手に光の速さで死刑判決を言い渡して逃げ切ろうとする意図が見えます。

そうすると、なぜ地元政府が「慰謝料」や「養育費」を支払おうとし、遺体を秘密裏に火葬したのか説明がつかなくなるのですが。


■「習近平の次」を狙うプリンス・胡春華の試練

大規模な騒乱はなんとか回避できました。しかし、モンゴル族の目的はデモそのものではありません。さらに問題の背後にはなにかと難しい民族問題が絡んでいます。胡春華の舵取りいかんではチベット、ウイグルに続く騒乱に発展しかねないでしょう。そうなれば、「習近平の次」などとは言ってられなくなります。「胡錦濤の秘蔵っ子」胡春華の試練は当分続くことになりそうです。

*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。

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 コメント一覧 (2)

    • 1. マネ
    • 2011年05月31日 21:16
    • 後世まで称えられるかどうかわからないけど、ネットの闇から出られない奴は信用できないと思います。

    • 2. Chinanews
    • 2011年05月31日 23:42
    • >マネさん
      ネットの闇から出られないで、大きな変革は難しそうだけど、出るのは怖いという……。

      自分にあんまり勇気がないから、そういう人に何も言えないという……。

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