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2011年06月03日
■公安が賠償持ちかけ、丁子霖は対話呼びかけ(成報、2011年6月1日)
これによると、今年の両会(毎年3月に開かれる全国人民代表大会と全国政治協商会議を指す)開催直前となる2月下旬と4月上旬の2度、北京市某区の公安部門
職員が私的に管轄地域に住むメンバーに賠償話を持ちかけたといいます。明報では5月下旬にもう1度接触があったとなっています。
真相の公開や司法的な追究については言及せず、賠償金についてだけ話をしてきたとのこと。また、「個人に対しての賠償であり、遺族全体に対してではない」と強調しています。これについては丁子霖(事件で息子を亡くした人民大学副教授)や王丹(事件の学生指導者の1人)らは口を揃えて、「遺族の切り崩しだ」と憤慨しています。
「天安門の母たち」の
声明は今回の接触を「長年の沈黙を破ったことは評価する」としながらも、「当局はカネで六四事件を片付けようとしている」と批判。犠牲者の遺族と政府との公開による対話に応じ、事実を隠さず歴史に責任を負うように求めています。
■政府側からの接触はジャスミン革命の影響?
当局は「80年代末の騒動についてはすでに結論は出ている」(姜瑜・外交部報道官♪)との姿勢を貫き、これまで何度もあった遺族からの対話呼びかけに無視を決め込んできました。また、事件現場への献花や追悼などを禁じ、遺族を監視するなど強硬姿勢をとってきたのに、何故、今年は遺族に接触したのでしょうか。
1回目の接触があった2月下旬といえば、ちょうど中国ジャスミン革命の第1回が起きた後です。中国ジャスミン革命と遺族とが手を結ぶなどの不安定要因を減らすために動いたと考えれば、かなり短絡的とはいえ、筋は通ります。
中国ジャスミン革命が党中央に与えた衝撃はそれだけ大きかったのですね。声明もその辺りに触れ、「私的に連絡を取るという方法が取られたのだろう」と結論付けています。内モンゴルのエントリーでも書きましたが、中共は相手が求めているものを理解しているけど、とにかくカネで押し切ろうとする事が多いのです。
もちろん相手が望むものは中共には差し出すことが出来ないケースがほとんどですし、カネで取引というか口封じに出る以外に方法を持っているわけではないのですが、つい先日にも接触があったとは驚き。ただ、国際的に注目を集めながら20年以上も活動を続けている遺族が、賠償金だけで釣れるなんてまずありえないのですが、党中央は本気でやってるのでしょうかね。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。