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「中国経済の爆弾」地方政府融資プラットフォームの残高は175兆円に

2011年06月06日

「中国経済の爆弾」としてリスクを指摘されてきた地方政府融資プラットフォーム。中国人民銀行が先日発表した報告書では、その総額は14兆元(約175兆円)超と従来の推定をはるかに越える規模に達している可能性が明らかにされた。2011年6月3日付経済観察網を参照した。


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■地方政府融資プラットフォームとはなにか?

地方政府融資プラットフォームについては、梶谷懐氏の論考「中国とEUはどこが違 うのか?――不動産バブルの政治経済学」(「壁と卵」の現代中国論第4回)に詳しい。土地を利用とした地方政府の「錬金術」を簡単に説明すると以下のとおり。

(1)地方政府は農地や宅地などを収用して払い下げることで利ざやを得ている。
(2)地方政府管轄のノンバンクを設立(これを地方融資プラットフォームと呼ぶ)。土地を担保として金融機関から融資を獲得し各種プロジェクトに投下。
(3)これらの資金は一般会計とは異なる「予算外会計」として扱われ、十分に把握されずにきた。

問題は、「中央政府による会計監査の目が届きにくいこと」「融資の返済は将来の土地の値上がりに期待していること」の2点。中国政府が不動産価格抑制策を打ち出すなか、膨大な不良債権が生じる懸念が指摘されていた。


■地方政府融資プラットフォームの規模は175兆円!

全国に1万社あるという地方政府融資プラットフォームの融資額は、合計するとどれほどの金額となるのか?諸説があるが、銀行監督管理委員会は9兆元(約113兆円)と試算していたという(2日付財新網)。

1日、中国人民銀行は報告書『2010年中国地域金融運行報告』を発表。同報告書の記述を読み解くと、想定以上に融資額が巨大だったことが明らかとなった。主報告にある「コラム2 地方政府融資プラットフォーム貸借状況分析」には、「各種融資に占める地方政府融資プラットフォームの比率は30%を越えていない」との一文がある。

2010年末時点での人民元貸出残高は47兆9200億元(約599兆円)。その30%といえば、14兆元(約175兆円)を超える計算だ。少なく見積もって25%としても12兆元(約150兆円)。銀行監督管理委員会の試算とは3兆元(約37兆5000億円)もの差がある。

経済観察網は、「地方政府融資プラットフォームへの実際の融資額は、人民銀行の報告書をも超える膨大なもの」とのある関係者の証言を掲載している。


■「中国経済の爆弾」をどう処理するのか?

上述したとおり、地方政府融資プラットフォームは「地価が右肩上がり」であることを前提としている。インフレ対策、中でも不動産価格高騰対策が主要課題となっている中央政府とは相いれない関係にある。

昨年来、中央政府はこの問題への監視を強めており、地方政府融資プラットフォームへのむやみな融資は減速傾向にあるようだ。人民銀行の報告書によると、融資残高は2009年末が前年比50%増の伸びを示したのに対し、2010年末は前年比20%増と減速したことを明かしている。

とはいえ、すでに巨大な規模となった地方政府融資プラットフォームへの対策、とりわけすでに不良債権化している部分の“処理”は重大なテーマだ。3日付経済観察報は、政府の委託を受けた研究機関がストレステストを開始すると報じた。

また、2日付経済観察網は地方政府融資プラットフォーム不良債権の清算が今年後半から実施される見込みだと報じた。その規模は2兆~3兆元(約25~37兆5000億円)に達する見通しだ。損失については中央政府、そして国有銀行が引き受ける枠組みだという。


■公的投資を支える地方融資プラットフォームを禁止できるのか?

もっとも問題は地方政府融資プラットフォームを禁止して終わりとはいかないだろう。よく指摘されているように、中国経済は「投資、輸出、消費」というGDPを構成する3要素のうち消費の比重が低い。地方融資プラットフォームの縮小はすなわち、政府機関による投資の減少を意味するだけに、経済全体に与える影響も考慮する必要がある。

人民銀行の報告書では、第12期5か年計画期間(2011~2015年)については、地方債の発行を推進することで地方政府融資プラットフォームに代替する方針を示した。従来の規制が緩和される可能性が高いが、しかし地方債もまた新たな火種ともなりうる。そもそも地方債が過剰に発行されることを恐れて、今まで規制をかけていたのだから。

地方政府融資プラットフォームの“処理”はどのように進められるのか、地方債の発行にはどのような具体案が導入されるのか、今後の注目点となる。


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