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2011年06月09日
■Gメールへのサイバー攻撃
そのグーグルが今年6月に入り、再び人権問題やハッカー問題で中国を名指しで批判しました。グーグルは1日、同社ブログで、グーグルの「Gメール」に対し中国からサイバー攻撃が行われ、米国の政府高官や中国の政治活動家ら数百人の個人情報が盗まれたと発表しました。
翌2日、中国外交部の洪磊・報道官は記者会見でこの問題を取り上げ、「このような誤った行為の責任を中国になすり付けるのは受け入れられない」と反発。「中国も『ハッカー』による攻撃の被害者だ。中国が『ハッカー』を支持しているとの見解はでっち上げであり、他に下心がある発言だ」と反撃しました。
過去にも昨年1月にグーグルに対するサイバー攻撃が行われたことが公表されたことがあります。このときも外交部は同じような反応をしていますし、政府としてはグーグルに対する通常運転的な反応であるといえるでしょう。
■グーグルの「無神経な」発表
ただ、特筆すべき点もあります。外交部記者会見では、サイバー攻撃の対象に「中国の政治活動家」が入っていたことについて触れられませんでした。「6・4」(天安門事件記念日)を直前という時期にグーグルが「無神経な」発表をしたことについて、中国政府が内心怒っていたであろうことは容易に想像できます。
その怒りを代弁するかのような記事も発表されています。6日、政府メディアの人民日報に「グーグル、何をしようとしているのだ」と題した署名論文が掲載されました。「ハッカー攻撃の被害者リストに中国の人権活動家を入れたのは、西側世界の中国に対するマイナスのイメージに迎合しようとするグーグルの意図だ」と指摘しています。
さらに「最近のグーグルはとても残念である。これまでイノベーションを先取りしてきたネットの模範者が、他国を非難する政治的道具に成り下がっている。開放を提唱し、平等を共に享受してきたトップ企業が、いまではインターネットの精神を放棄してしまっている」と痛切に批判しました。
そして、「グーグルは国際的な政治闘争に巻き込まれ、その道具になるべきではない。さもなくば、国際情勢が変化した際、政治の犠牲となり市場から捨てられるだろう」と警告したのです。
■中国政府の脅しとグーグルの対応
日本や米国など西側諸国の政府、企業に対する批判は、「環球時報」あたりから発表されることが普通です。しかし今回は一つ格上の「環球時報」から、評論員の署名付き論文として発表されています。中国政府がこの問題をどれだけ重く見ているかという証拠とも言えるでしょう。
また、上記引用文にある「国際情勢の変化」とは、「中国政府が本気で立ち向かうこと」を示しているのでしょう。つまり、上記論文は、政府メディアを通じてグーグルに発した中国政府の脅しなのです。
現時点では、グーグルは外交部報道官の談話や人民日報記事に対して反論していません。ヒートアップさせるよりも、冷却期間を置いて次の一手を打とうと考えているのかもしれませんし、下手に中国に歯向かって中国でのビジネスチャンスを潰すのは得策ではないとの意図があるのかもしれません。
再燃したグーグルと中国との争い。面白くなってきました。
*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。