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日本メディアの批判的報道に反論=「中国海軍の第一列島線越えは必然だ」―中国

2011年06月10日

2011年6月9日、日本防衛省は沖縄県・宮古島北東約100キロの公海を中国人民解放軍海軍の艦艇が通過したと発表した。8日に8隻、9日に3隻と過去最大規模。同海域では昨年4月にも中国の艦艇10隻の通行が確認され、話題となった(9日付朝日新聞)。


Battleship / jmd41280

*image


このニュースに対する中国当局の反応を紹介する。


■外交部と防衛部の反応


2011年6月9日外交部報道官・洪磊の定例記者会見

質問:先日、日本防衛省は中国艦隊が沖縄付近の海域を通行したと発表しました。最近、日本近海での中国海軍の活動が頻繁ですが、中国側がどのようにコメントされますか?

回答:すでに中国国防部の発表にお気づきかと思います。(今回に)関係する訓練は中国海軍の正常な訓練活動であり、特定の国や目標を持つものではありません。

中国海軍艦隊は西太平洋国際海域で定例演習を実施へ(国防部網6月9日電)
解放軍記者・鄭文達
海外メディアによる「中国海軍艦隊が沖縄本島と宮古島の間の公海」を通過したとの報道に対して、記者は国防部ニュース事務局より情報を得た。中国人民解放軍艦隊は6月中・下旬に西太平洋国際海域での演習を実施する。これは年度計画に含まれている定例的な演習である。関連する国際法規則にのっとったもので、特定の国と目標を持つものでは決してない。
(太字強調は訳者)

昨年は4月、今年は6月とずれがあるが、「定例的な演習」とのこと。これからは毎年、「中国海軍がやってきた」「政府は抗議しないのか、この弱腰野郎」と騒ぐのが日本の風物詩となりそうだ。


■羅援少将、吠える

外交部と国防部の発表は抑制された面白みのない反応だったが、こういう時に盛り上げてくれるのは国の「代弁者」的な役割を担う官制メディアの署名記事だ。10日、環球時報は、中国軍事科学学会副事務局長の羅援少将の論文を掲載した。長文なので、面白そうなところだけをつまんだ抄訳を掲載する。小見出し、太字強調は訳者。
中国海軍の第一列島線越えは必然だ

海外メディアの報道に国防部はすばやい対応を見せたが、これは批判に対してすでに準備ができていたということを意味する。それはなぜか、我々の行動は理にかなったものであり、また合法的でもあるからだ。


・中国が第一列島線を越えたい理由

まずは「理」について話そう。昨年、ある大国(米国のこと)がはるばる我々の玄関までやってきて、他国との合同演習をしていたではないか。誰がそれを非難した?我々の定例的演習はそんなに驚くようなことか?他国は「海上航行の自由」をお題目に好き勝手しているのに、中国にはその権利がないというのか?

我々は演習が他国を対象としたものではないと繰り返し表明している。彼らは中国により多くの国際的義務を担わせたいのではないのか。中国海軍が第一列島線を突破して、近隣の海域情報について知るようにならなければ、どのようにして国際救助ができるというのだ?ひょっとして中国海軍の第一列島線内部に押し込めようとしているのだろうか?世界第二の経済体が持つ海軍を「川軍」に変えようとでも。あのと文句をいう輩はどうすれば安心するのだ。

実際、一部の人々は中国の台頭を押さえつけようとしている。中国龍と中国虫に変えようとしているのだ。


・国際法的に見ても問題はない


続いて「合法」について話そう。中国海軍が通行したのは公海だ。「海洋法に関する国際連合条約」第38条に従えば、以下2つの条件を満たせば、中国の艦艇及び航空機の通行が認められる。第一に「遅延することなく通行すること」。第二に「沿岸国の主権、領土の統一及び政治的独立に対する武力的威嚇及び武力の使用を行わないこと」だ。これを満たせば、ピーチクパーチク(説三道四言われる筋合いはない。

先日、閉幕したシャングリラ対話(アジア安全保障会議)で、マレーシアのナジブ首相は鄭和と西洋についての話をされた。600年以上前、鄭和はマラッカを訪問し平和と友好をもたらした。その100年後、ポルトガル人はマラッカを侵略し130年にわたり統治した。

ナジブ首相が見るところ、中国の発展はプラスの意味を持つ。「不安になる理由は何もない」のだ、と。ナジブ首相の発言はたとえ一部の国が「脅威だ、脅威だ」と騒ぎ立ててても、中国の「平和パワー」は隠せるものではないことを示している。中国の成長は周辺国に理解され、受け入れられているのだ。


・みんな遠洋海軍を持っているんだから、中国にも欲しい

目を移してみると、中国の周囲ではロシアは遠洋海軍を備えている。インドも猛烈な勢いで空母戦力を整備している。インド洋を管理しようとする同国の狙いは誰もが知っている。韓国と日本は空母こそないものの、それなりの遠洋における独立作戦能力を備えている。

ならば、なぜ中国海軍は遠洋海軍を持ってはいけないのか?中国海軍の第一列島線越えは必然だ。妨害しようと思ってもできるものではない。必要性もあり、また国際法にも合致しているのだから問題はないのだ。

■なぜこの時期に演習を実行したのか?

「説三道四」という単語が2回も出てくる愉快な論文だった。私がタイトルを付けるなら、「ガタガタ言うな」といったところだろうか。確かに中国が遠洋海軍を持つことも公海を通航することも違法行為だと責め立てることはできないように思う。となると、日本が文句を言うポイントは「中国の平和パワーとやらは、周辺国に理解されていませんよ。もっと透明性を高めてください。説明してください」というところになるのではないだろうか。

さて、今回の中国艦隊通行は「平常運転」だと思われるので特にコメントすることはないのだが、ちょっと気になる点もある。南シナ海情勢。ベトナム、そしてフィリピンとの緊張が高まっている、このタイミングに、なぜ日本の神経を逆なでする宮古島海域通行を実施したのかという点だ。

中国外交といえば、「二正面作戦を避ける」のが伝統。ならば演習の時期をずらすという判断があってもおかしくなかったはずだ。「宮古島海域突破ぐらいじゃ日本は怒らない」と踏まれているのか、外交的判断と軍の判断がずれているのか、はたまた別の理由があるのか。中国の内部事情も気になるところだ。


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