中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年06月12日
■習近平・副主席、カストロ氏を見舞う
まず目に付くのが、現在外国を歴訪している習近平・副主席、汪洋・広東省党委書記、李源潮・中央組織部長です。しかし、国内メディアの扱いはそう大きなものではありません。中央テレビや北京放送で連日事細かに動向が報道されているのは、習副主席の中南米訪問ぐらいです。汪・広東省党委書記は現在ドイツ
を訪問していますが扱いは小さく、グーグルで検索しなければ分からないほど。李・中央組織部長の北朝鮮訪問に至っては、全く報じられていないのです。
このことは裏を返せば、次世代のリーダーとして確定しているのは今のところ、習副主席ぐらいだという認識が現在中国政府にあるとも言えます。しかし個別に見ていくと、いろいろ興味深いことも見えてきます。
現在チリ訪問中の習副主席は、歴訪したイタリア、キューバ、ウルグアイ、チリの各国で手厚い歓迎を受けており、次世代リーダーとして重視されていることがわかります。キューバでは病気療養中のカストロ氏を見舞っていますが、「次は私がトップなのでよろしく」とあいさつしたのでしょう。
■現トップとの関係悪化が報じられた汪洋・広東省党委書記
汪・省党委書記のドイツ訪問は小さな扱いではありますが、訪問先のバイエルン州で同州首相に「社会管理の面で参考にしたい」と話しており、現在治安担当である周永康中央政法委書記の後継を意識した発言をしています。
(ソース:羊城晩報)
汪・省党委書記は2009年上半期、政策をめぐって温家宝総理と対立したと国外メディアに報じられました。胡錦濤総書記との関係も険悪になっているといわれています。元トップとの関係悪化が来年の人事にどう影響するのかがカギとなるでしょう。
■李源潮・中央組織部長、次期外交トップに就任か
李源潮中央組織部長の北朝鮮訪問も非常に象徴的ともいえます。朝鮮労働党と中国共産党の両代表団は10日、平壌の万寿台議事堂で戦略対話を実施したのですが、その中の中国側代表団のトップとして同氏が名を連ねたのです。
(ソース:中国評論新聞網)
代表団にはほかに、対北朝鮮交渉で豊富な経験を持つ王家瑞・中共対外連絡部部長も参加しています。
李・組織部長はこれまでもちょくちょく訪朝しており、今回も外交交渉の経験をつむことが目的の1つになっていると思われます。聨合早報は、「来年の次世代指導グループの中で、李・組織部長は外交責任者の人選の1人になっている」と予測しています。また同報は同氏を「ここ数年外交の場面で極めて活発に活動しており、中日の影の外交推進者の1人でもある」と評しています。同氏が本当に外交担当になったならば、日中関係で柔軟な対応を期待できるかもしれません。
ただ、李・組織部長は胡錦濤グループの「団派」の一人とされており、習近平副主席とは対立する関係にあります。このため現在の状況が来年までに変化する可能性は十分あります。
■精力的な動きを見せる王岐山副総理
李源潮組織部長に対して華々しいのは王岐山副総理です。現在外交政策、対米関係の外交交渉や国際金融政策、エネルギー政策ではかならず同氏の名前が挙がるほどです。
その証拠に今月にはいってからの動きを見てみると……。
3日ロシアで中ロエネルギー交渉第7回会議に出席。といったように、ひっきりなしの外交日程となっているのです。担当分野が李源潮組織部長とかぶっている現状をどう折り合いつけるのかが注目すべきところなのでしゃないでしょうか。
返す足で4日に南部アフリカ開発共同体経済貿易フォーラム開幕式に出席。
8日にはフランスの経済・財務・工業相と会見。
9日には国際通貨基金代表代行やビルゲイツマイクロソフト会長と会見。