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業績作りに奔走する次世代の支配者たち=地位を固める習近平と地味な李克強―翻訳者のつぶやき

2011年06月12日

次世代リーダーたち

2012年の中国共産党大会で新しい指導層の誕生が予定されている中国。

現在、その次世代リーダー(中国共産党中央政治局常務委員)入り有力と目されているのが、習近平・国家副主席、李克強・副総理、王滬寧・中共中央政策研究室主任、王岐山・国務院副総理、李源潮・中共中央組織部長、汪洋・広東省党委書記、薄煕来・重慶市党委書記、令計画・中共中央弁公庁主任らです。

彼らはこのところ活発な動きを見せており、まるで来年の次世代指導層誕生に向けて、外交や政治の修行中のようにも見えます。

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中国新聞社の報道。

*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。


■習近平・副主席、カストロ氏を見舞う

まず目に付くのが、現在外国を歴訪している習近平・副主席、汪洋・広東省党委書記、李源潮・中央組織部長です。しかし、国内メディアの扱いはそう大きなものではありません。中央テレビや北京放送で連日事細かに動向が報道されているのは、習副主席の中南米訪問ぐらいです。汪・広東省党委書記は現在ドイツ を訪問していますが扱いは小さく、グーグルで検索しなければ分からないほど。李・中央組織部長の北朝鮮訪問に至っては、全く報じられていないのです。

このことは裏を返せば、次世代のリーダーとして確定しているのは今のところ、習副主席ぐらいだという認識が現在中国政府にあるとも言えます。しかし個別に見ていくと、いろいろ興味深いことも見えてきます。

現在チリ訪問中の習副主席は、歴訪したイタリア、キューバ、ウルグアイ、チリの各国で手厚い歓迎を受けており、次世代リーダーとして重視されていることがわかります。キューバでは病気療養中のカストロ氏を見舞っていますが、「次は私がトップなのでよろしく」とあいさつしたのでしょう。


■現トップとの関係悪化が報じられた汪洋・広東省党委書記

汪・省党委書記のドイツ訪問は小さな扱いではありますが、訪問先のバイエルン州で同州首相に「社会管理の面で参考にしたい」と話しており、現在治安担当である周永康中央政法委書記の後継を意識した発言をしています。
(ソース:羊城晩報

汪・省党委書記は2009年上半期、政策をめぐって温家宝総理と対立したと国外メディアに報じられました。胡錦濤総書記との関係も険悪になっているといわれています。元トップとの関係悪化が来年の人事にどう影響するのかがカギとなるでしょう。


■李源潮・中央組織部長、次期外交トップに就任か

李源潮中央組織部長の北朝鮮訪問も非常に象徴的ともいえます。朝鮮労働党と中国共産党の両代表団は10日、平壌の万寿台議事堂で戦略対話を実施したのですが、その中の中国側代表団のトップとして同氏が名を連ねたのです。
(ソース:中国評論新聞網

代表団にはほかに、対北朝鮮交渉で豊富な経験を持つ王家瑞・中共対外連絡部部長も参加しています。

李・組織部長はこれまでもちょくちょく訪朝しており、今回も外交交渉の経験をつむことが目的の1つになっていると思われます。聨合早報は、「来年の次世代指導グループの中で、李・組織部長は外交責任者の人選の1人になっている」と予測しています。また同報は同氏を「ここ数年外交の場面で極めて活発に活動しており、中日の影の外交推進者の1人でもある」と評しています。同氏が本当に外交担当になったならば、日中関係で柔軟な対応を期待できるかもしれません。

ただ、李・組織部長は胡錦濤グループの「団派」の一人とされており、習近平副主席とは対立する関係にあります。このため現在の状況が来年までに変化する可能性は十分あります。


■精力的な動きを見せる王岐山副総理

李源潮組織部長に対して華々しいのは王岐山副総理です。現在外交政策、対米関係の外交交渉や国際金融政策、エネルギー政策ではかならず同氏の名前が挙がるほどです。

その証拠に今月にはいってからの動きを見てみると……。

3日ロシアで中ロエネルギー交渉第7回会議に出席。

返す足で4日に南部アフリカ開発共同体経済貿易フォーラム開幕式に出席。

8日にはフランスの経済・財務・工業相と会見。

9日には国際通貨基金代表代行やビルゲイツマイクロソフト会長と会見。
といったように、ひっきりなしの外交日程となっているのです。担当分野が李源潮組織部長とかぶっている現状をどう折り合いつけるのかが注目すべきところなのでしゃないでしょうか。


■かばん持ちを続ける王滬寧・中央政策研究室主任、令計画・中央弁公庁主任

王・滬寧中央政策研究室主任、令計画・中央弁公庁主任に関しては、「あいかわらず」です。この2人は胡錦濤体制になってからもう何年も、胡錦濤氏が視察や歴訪をする際の随行者として「かばん持ち」を続けています。

今年5月31日から6月3日まで胡錦濤総書記が湖北省で洪水対策の視察をした際も、随行者として両氏が名を連ねていました。彼らは随行者として名前が挙がる以外は、メディアでも極めて地味な取り扱いであり、来年の指導グループ交代の際もこのような取り扱いは変わらないと考えられます。


■注目を集める薄煕来・重慶市党委書記

薄煕来・重慶市党委書記は、これまで挙げてきた次世代リーダーの中で最も「浮いている」人物でしょう。その「浮きっぷり」は過去記事「文化大革命の負の遺産」重慶の革命歌教育を温家宝首相が批判」を見ていただきたいのですが、7月に中国共産党創設90周年を迎えるという「世論の高まり」をバックに、ますます「紅唱」(革命歌)の普及に熱を上げています。

中国新聞網の報道によると、11日夜、北京市で「紅唱を永遠に伝えよう」と題した重慶市民による革命歌のコンサートが開催されました。薄・重慶市党委書記も観覧しています。いかにも「重慶市の革命歌普及活動は自分がやっています」とアピールしたげなパフォーマンスです。

何はともあれ、次世代グループの中では、同氏の動向が次期政権の成功と失敗のカギを握っているともいえるのではないでしょうか。


■次期ナンバー2なのに影が薄い李克強・副総理

最後に・・現在政治局常務委員であるにもかかわらず、とても地味なのが李克強・副総理です。出てくるのは地方の視察などのニュースぐらいで、「何か取り組んでいる」と印象付けられる活動はほとんどないといってもいいぐらいです。

ただ現在、台湾製食品に工業薬品・可塑剤が混入していた問題で中台ともに大騒動になっていますが、食品問題担当の李・副総理が対応に追われているという可能性も十分に考えられます。果たして来年10月の党大会までに「李克強・副総理の成果」を打ち出すことができるのでしょうか。

彼ら次世代リーダー候補たちが、予想通り順当に政治局常務委員の座を勝ち取ることができるのか。興味深い問題です。

*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。

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