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2011年06月12日
中国スーパーリーグのクラブ・深圳ルビーは、今年、元日本代表監督のフィリップ・トルシエ氏を招聘した。華麗なパスサッカーでアジアのライバルを圧倒したトルシエ・ジャパンは中国のサッカーファンにも鮮烈な印象を残しており、「大物監督」として期待を持って迎えられている。
トルシエ監督は巻誠一郎選手、楽山選手と2人の日本人選手を獲得、中国プロリーグの戦いに挑んだ。だが、その船出は苦渋に満ちたものとなった。深圳ルビーは開幕から7戦連続未勝利という最悪のスタートを切り、第10節終了時点で1勝6敗2分の15位(全16チーム)と低迷している。
最大の問題は10試合で4ゴールという得点力不足。期待された元日本代表FW・巻選手は古傷に苦しみ、ここまで4試合の出場にとどまり、ゴールをあげられていない。クラブ側は新たな外国人FW獲得を示唆しており、巻選手は解雇の危機に立たされている。
一方、巻選手と同時に「日本人初の中国スーパーリーグ出場選手」となった楽山選手はコンスタントなパフォーマンスを見せている。ここまで全試合に出場。しかもうち8試合はフル出場と主力選手としての活躍ぶりだ。だが、周囲の視線は厳しかった。「助っ人外国人」としては、楽山選手の得点力の欠如が致命的なものと見られていたのだ。
楽山選手が前回、公式戦でゴールをあげたのは2004年のこと。プロ初ゴールを決めた後、7年間もゴールに見放されていた。口さがないある評論家は「ウンコ」呼ばわりしたほど。チームのためにも、トルシエ監督のためにも、そして自分のためにもゴールが必要だった。
12日の青島中能戦。批判に負けずプレーを続けてきた楽山選手にチャンスが訪れる。後半26分、ペナルティーエリアに走り込んだ楽山選手にパスがでる。冷静にトラップしシュート。値千金の同点ゴールをあげた。自身7年ぶりのゴールは、中国スーパーリーグにおける日本人初ゴールとなり、中国メディアもこの快挙を大きく取り上げている。