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2011年06月13日
■「戦術を教える前にボールの蹴り方を教えないと……」ぼやくトルシエ
「白巫師」トルシエ監督が率いる深圳ルビー。泥沼の肉弾戦が目立つ中国スーパーリーグでも、パスサッカーを志向すると宣言。深圳ルビーのサポーターだけではなく、中国サッカー界の変革を願う中国人サッカーファンからの期待を集めた。
(白巫師とは日本語で言う「白い呪術師」。トルシエ監督の肩書きだが、『ロード・オブ・リング』の「白のガンダルフ」と同じ表記なのが少し面白い。)
しかし現実はというと、パスサッカー以前の状態。外国人を含めた主力選手にけが人が続出。外国人選手5人のうち、全試合出場を続けているのは楽山選手だけという惨状だ。トルシエ監督は「思っていた以上に選手がサッカーを分かっていなかった。戦術を教える前にボールの蹴り方を教えないといけない」と外国人監督恒例のぼやきを発しているが、戦術浸透を焦るあまりフィジカル面での調整に失敗したと批判されても言い訳できないのではないか。
開幕から7戦連続未勝利という最悪のスタートを切り、第10節終了時点で1勝6敗2分の15位(全16チーム)と降格圏に沈んでいる。
■「プロ意識と敢闘精神」を評価されるも怪我に泣いた巻
全30節のうち10試合が終了した中国スーパーリーグ。「3年でアジアを制す」と豪語していたトルシエ監督だが、今シーズンはまず降格回避が最大の課題となった。チームも新外国人選手を獲得しサポートする方針だ。こうした条件で割を食ってしまったのが巻選手だ。
くるぶしの古傷が悪化し練習参加さえままならない状況。回復には3カ月が必要と診断されている。今期の出場はわずか4試合、ゴールはゼロというふがいない成績だが、意外にも中国メディアは巻選手を高く評価している。「卓越したプロ意識と敢闘精神」というのがポイントらしい。できれば回復を待ちたいところだが、チーム状態がそれを許さないとの分析だ。
かくして巻選手の中国でのチャレンジは終わりを告げた。だが、主力として活躍し初ゴールを決めた楽山選手への期待は高まっている。トルシエ監督は「(新たに獲得する外国人選手は)サッカーを知っている選手が条件」とコメントしているが、ベテランにして苦労人の楽山選手こそが今、チームで最も「サッカーを知っている選手」かもしれない。