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2011年06月14日
■独立候補者立候補の動きと中国選挙法
そのような中、中国全国の各県・郷で今年年末にかけて、地方人民代表大会代表の改選選挙が行われるのですが、今回は新たな動きが話題となっています。個人が「独立候補者」として立候補の名乗りを上げているおり、話題になっているのです。
中国の選挙法には、各地方人代の代表については住民の投票による「直接選挙での選出」が認められています。「住民が直接代表を選ぶのだから、十分民主主義にかなっている」というのが中国側の主張です。
しかし、中国の人代代表の候補者になるためには、手順を踏まなければなりません。中国の選挙法には、「各政党、各人民団体は法に基づき、合同または単独で『代表候補者』を推薦できる。選挙民、または代表10人以内の連名でも、代表候補者を推薦できる。この『代表候補者』から、討議、協議、予備選挙を経て、『正式代表候補者』が確定される」と規定されています。
(中華人民共和国選挙法:創業資訊)
つまりこの規定では、「単独で立候補はできない。一定の手続きを経た人しか、人代代表の候補者にはなりえない」ということを示しているわけです。
■「独立候補者には法的根拠がない」政府が示した判断
独立候補が立候補する背景には、既存の「正式候補者や代表候補者の選出に偏りがある」という現状が透けて見えます。「独立候補」として名乗りを上げた人たちは、「現在発生している社会問題は、共産党の息がかかった人間には任せられない。より市民の声に即して処理すべきだ」という考えで行動を移したと考えられます。
こうした「不穏」な動きが広がるなか、全国人民代表大会(全人代)もついに重い腰を上げました。財新網の報道によると、6月8日に「全人代常務委法律工作委員会の責任者」が記者の質問に答え、「独立候補者」問題について明確な解釈を示しました。この記事は同日夜の中央テレビの定時ニュース番組「新聞聯播」でも大々的に報じられています。
その解釈によると、「県・郷両級人代代表の候補者は、各政党、各人民団体、選挙民が法に基づいて手順に従って指名・推薦される『代表候補者』と、討議・協議、予備選挙を経て確定された『正式代表候補者』しかいない。いわゆる『独立候補者』は存在しない」とし、このような「独立候補者」擁立の動きに明確に「ノー」を突きつけたのです。「独立候補者」の不当性が認定された瞬間でした。
■独立候補者は中国共産党にとっても歓迎すべき動きだ
しかし、この判断に疑義を呈する声もあります。コラムニストの笑蜀氏は、「いわゆる『独立候補者』とは民間の言い方でしかない。いわゆる『独立候補者』も、10人以上の選挙民が連名で推薦すれば、代表候補者、正式代表候補者であることは疑う余地はない」と指摘。「独立立候補者」の動きはむしろ歓迎するべきであり、「独立」「非政府」という言葉に拒否反応を示す中央官僚の体質を批判しました(鳳凰網)。
民主主義国家に住んでいる人間からすると、「立候補にも(共産党の)審査がある」という中国の選挙の法体制には大いに違和感を感じます。独立候補者擁立の動きは、中国の市民の政府に対する「ささやかな抵抗」なのかもしれません。
*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。