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物価上昇率は34カ月ぶりの高水準に=インフレと中小企業資金難で板挟みの政府―中国

2011年06月14日

2011年6月14日、中国国家統計局は5月期国民経済主要指標データを発表した。注目の消費者物価指数(CPI)は5.5%と34カ月ぶりの高水準を記録した。ある専門家は6月はさらに上昇するとの見方を示している。

5月期国民経済主要指標データ(国家統計局ウェブサイト)
5月期主要統計データに関する記者会見(国家統計局ウェブサイト)


小猪猪 / schatznatasha


■34カ月ぶりの高水準を記録したCPI、食品価格が牽引

品目別の上昇率(前年同月比)は以下の通り。

20110614_inflation_rate
「5月期国民経済主要指標データ」より作成。

前月までと同じく、食品及び住宅費が物価上昇を牽引している。中でも豚肉価格の上昇が激しい。豚価格は40.4%と大きく上昇。CPI上昇分のうち20%弱を占めている。しかし、統計局報道官は前年同月比での上昇は続いているものの、前月比では0.1ポイント増とほぼ横ばいになったと指摘。政府のインフレ対策が功を奏したと強調している。

もっとも6月のCPIはさらに上昇するとの予測が多数を占めている。中国社会科学院金融研究所の劉煜輝氏は野菜、果物の価格の上昇が7月、8月にピークに達すること、非食品部門の構造的インフレが続いていることから、6、7月は6%を越えるとの見通しを示した。また中金公司は中国南部の干ばつの影響により食品価格が上昇、6月のCPIは6%を越えると予測している(財経網)。


■金融緩和か、金融引き締めか

14日午前のCPI発表を受け、午後には中国人民銀行が預金準備率の0.5ポイント引き上げを発表した(中国人民銀行ウェブサイト)。CPI上昇率が34カ月ぶりの高水準となったことで、金融引き締めを強化し、インフレ対策の決意を示した格好だ。

しかし、一層の金融引き締めは中国中小企業の資金繰りを悪化させることになる。10日付フィナンシャルタイムズ中国語電子版は「中国中小企業が直面する『銭荒』」と題してこの問題を取り上げている。「銭荒」とは資金不足のこと。中華全国工商業連合会が全国16省を対象に実施した調査によると、中小企業の多くが資金繰りに苦しんでいることが明らかとなった。金融引き締めが続けば大量の倒産につながりかねないと警告している。


■中小企業の経営難と社会秩序

先日、広東省潮州市では大規模な暴動が起きた。発端となったのは給与未払いのトラブル。陶器工場で働く四川省出身の出稼ぎ農民が遅配の給与を支払うよう経営者に求めたところ、逆ギレした経営者らが暴行を加え、手足が切り裂かれるという惨事となった。これに怒った同郷の出稼ぎ農民らが集まり、地元政府に詰めかけたというもの。その後事態は悪化し、地元の広東人と四川人との地域間対立の様相を示すにいたった。

潮州の事件で最大の問題は経営者の逆ギレにあるが、しかし、中小企業の資金繰り悪化に伴い、こうした給与遅配は増加しているもようだ。メディアの報道は禁じられているものの、ネット掲示板などでは各地のストライキも伝えられており、社会の緊張は高まりつつある。

今や中国政府はきわめて厳しい状況に立たされつつある。インフレ対策の金融引き締め、資金繰り解消のための金融緩和もそれぞれデメリットがはっきりしている。では人民元切り上げるかといえば、製造業に与える影響が大きい。

最終的には各方面のバランスを取りつつ、また中小企業向け融資や補助金などマクロ経済コントロール以外の施策も組み込みつつ対処することになるだろうが、神経を使う微妙な舵取りが要請されることになる。



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