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2011年06月16日
■事件の経緯
「警備員が女性大学院生に性的暴行未遂=反抗されたため110回刺して殺害」新華網、2011年6月14日
2011年6月10日、湖北省襄陽市中級人民法院で殺人事件の裁判が行われた。被害者となったのは大学院生の小倩さん(仮名、25歳)。性的暴行に抵抗したところ、ナイフで110回も刺され死亡した。
1月25日、旧正月休みに帰省した小倩さんはいとこの家に遊びに行った。その夜はいとこの家に一泊。翌日、いとこが出勤し、一人家に残っていたところに悲劇が起きた。運悪く防犯用扉を開けっ放しにしていたところ、不動産管理会社警備員の謝(19歳)が窃盗目的で忍び込んできたのだ。寝間着姿の小倩さんを見て、謝は劣情を催し、襲いかかった
押し倒された小倩さんは大声で助けを呼び続けた。謝はクッションを顔に押し当て、どうにか黙らせようとしたが、小倩はそれでも抵抗を続けた。ついに謝はナイフを取り出し、小倩さんの体に突き立てた。検視記録によると、傷口の数はなんと110カ所もあったという。胸の下から腹、腰にかけてだけで90カ所。うち40カ所は腹腔にまで達する深い傷だった。殺害後、謝は台所でナイフを洗い、何事もなかったようにオフィスへと引き返してそのまま勤務を続けた。
10日の裁判で謝はほとんど表情を変えることなく、犯行事実を認めた。法定では遺族から民事賠償84万元(約1050万円)の請求があったが、謝罪は必要だとの考えを示しつつも賠償を拒否している。遺族は、命はかけがえのないもの。賠償はともかく、犯人に厳しい処罰を下し正義を実現して欲しいと発言した。
■「暴漢に襲われたら、コンドームを差し出しなさい」
2011年5月10日、華中師範大学の彭暁輝副教授が南京師範大学で講座「性と人的交際」を開催した。席上、彭副教授は、男女の人口比が著しく異なる中国の現状をかんがみ、男性の同性愛を合法化するべきだなど伝統的観念とは反するような話を繰り返した。その一つに「もし性的暴行を加えようとする暴漢に出くわしたら、女性は相手にコンドームを差し出すべき」という発言があり、騒ぎとなった。
エイズなどの性感染症を避けることができるからというのがその理由だが、講座に出席していた男子学生は「女性にとって貞節は非常に重要なもの」と反論。2人は激論を戦わせた。このやりとりがネットに流出し、マスメディアにも転載される騒ぎとなった。
■襄陽市の事件が示したもの
この議論からほぼ1カ月が過ぎた今、襄陽市の事件に関する報道があり、再び「暴漢とコンドーム」問題が話題となっている。大手ネット掲示板・百度吧では、「生命と貞節、どちらが大切か?」という投票が行われた。
16日午後5時時点で8406人の投票があり、「命が重要」との意見が59%と過半数を占めた。「貞節が重要」との回答が18%。「両方とも重要。命が守りきれる状況ならば抵抗する」との回答が11%。「分からない」が12%となった。