中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年06月18日
■政府高官も「壁越え」しているのか?
グレート・ファイヤーウォール(GFW)と呼ばれる中国のネット検閲システム。今や日本のテレビ番組でも紹介されるほど有名になった。このシステムにより、中国からはツイッターやフェースブックをはじめ海外サイトの多くにアクセスできなくなっている。
ネットリテラシーが高い人はネット検閲を回避する方法(俗に「壁越え」と言う)を知っているが、知らない人は検閲されているサイトを見ることはできない。ここで気になるのは政府関係者などは海外サイトをどのようにして見ているのかという点だ。
以前、環球時報英字版の取材に答えた「GFWの父」方濱興氏は、壁越えの主要ツールであるVPNを6アカウントも所有していると明かしたが、政府高官もネット検閲からは逃れられないようだ。胡錦濤国家主席や温家宝首相までせこせこVPNにつないだり、「おいおい今日はネットつながらねー」とか嘆いているかと思うと、ちょっと面白いような気もする。
■クラウド特区の狙い
閑話休題。南方週末によると、重慶市で建設が進められている10キロ四方の「クラウド特区」は中国で唯一、ネット検閲がない地域になるという。その目的は海外企業のデータセンター業務受注にある。ネット検閲があるため、中国はこれまで海外向けデータセンターを持てずにいた。
しかし、今、クラウド・コンピューティングがIT産業の新たな成長分野となっている。今後、データセンター需要が激増すると見込まれているが、その果実をみすみす捨てるわけにはいかない。こうした考えから「クラウド特区」が誕生したという。
もっとも重慶区の申請に中央政府はなかなか首を縦には振らなかった。結局、「クラウド特区」は海外の回線に直結するかわりに、中国国内とのアクセスは遮断されることで決着したという。
ネット検閲以外にも、スパイ疑惑などの問題を抱える中国に、どれだけの企業がデータセンターを置こうとするか疑問ではある。あるいは、インターネットの自由を享受したい中国ネット民向けにサービスを提供するほうがより儲かるのではないだろうか。