中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年06月19日
■陰性エイズってなに?
検査してもエイズウイルスは検出されないが、エイズ感染初期と似たような症状(軽い発熱、倦怠感、筋肉痛、関節痛)を引き起こす「謎の病気」。
数年前から、中国衛生部には「エイズとは診断されないが、症状的にエイズっぽい。検査にひっかからない新種のエイズ(陰性エイズ)か、あるいは未知のウイルスではないだろうか」との訴えが寄せられていた。上記の症状を読めばわかるとおり、「それってエイズじゃなくてもあるんじゃね?」という内容だが、「すわ、未知の病気襲来か」と煽る報道もあり、不安が醸成されていった。
■中国衛生部が調査
不安の高まりを受け、ついに中国衛生部も調査を開始。まず2009年9月から翌年1月にかけ、59人の「自称・陰性エイズ患者」を調査。中国国内の研究機関だけではなく、米国の研究機関でもサンプルを検査してもらったが、エイズウイルスは検出されなかった。
さらに2011年2月から3月にかけて新たな調査を実施。前回の被対象者15人を含む40人が調査された。いずれもエイズウイルスは認められなかった。それどころか「自称・陰性エイズ感染者」は症状を訴えつつも、正常に仕事や勉強ができる状態であることが確認された。重大な疾患で入院したり、死亡する例もなかったという。
こうした調査結果を受け、今年4月、中国衛生部関係者は、「陰性エイズ」とはエイズにかかったと心配しているだけの「エイズ恐怖症」ではないかと発言した。
■エース研究者・鐘南山が調査を開始
フジの記事にも書かれているが、新型肺炎(SARS)対策の第一線に立った著名な医学者・鐘南山氏も陰性エイズの調査に乗り出した。
5月6日、鐘氏率いる研究チームは60人の「自称・陰性エイズ感染者」を検査した結果を発表している。エイズウイルスは発見されなかったが、慢性疾患などをもたらす可能性のある病原体6種のうち、いずれか1つが検出された患者は48人と全体の80%に上ったことを発表した。うち33人がEBウイルスに感染していたという。この検査結果から、すべての「自称・陰性エイズ感染者」が勘違いから不安に思っているわけではなく、一部にはなんらかの感染症を患っている人もいるのではと提起した。
しかしEBウイルスはアジア圏では感染者が多い。日本人だと90%が知らず知らずに感染した経験があるという(日本語ウィキペディア)。よって「自称・陰性エイズ感染者」の半数がEBウイルスに感染していたとしても不思議なことではないと中国衛生部は反論している。
■これが夕刊フジの煽り力
調査結果を見る限り、未知の病原体が「陰性エイズ」を生み出している可能性はゼロではないが、現時点ではその可能性は低いのではないだろうか?
今回の件で個人的に感心したのは夕刊フジの「煽り力の高さ」。
「性器ヘルペスって診断されて薬を飲んだけど治らなかった」「すごく疲れやすい」という証言
↓
陰性エイズ日本上陸!
ソープ店でコンドームを着けて遊んだ翌日から異変を感じた
↓
コンドームで防御できず