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2011年06月21日
その調査に参加した李戈洋という学生がブログに報告を掲載。博訊網に転載されています。
広州市新塘鎮騒乱独立調査大敦村事件の初期報告(博訊、2011年6月15日)
鎮圧に際して発砲があったか、死者は出たのか、などを四川出身者や地元住民など26人に聞き込み調査し、それを繋ぎ合わせた内容です。
■要因となったのは役人の発言?
調査によると、救急車に乗るのを渋る妊婦に、駆けつけた地元の役人が言い放った「妊婦が死んだら賠償は50万元(約619万円)でどうだろう」という発言が気になっています。この一言で、集まっていた囲観(野次馬)の怒りが爆発し、暴動へと繋がったからではないかと思うからです。
役人の間には賠償金を払えばチャラという考えは、先日起きた内モンゴルの轢死事件でも、遺族に賠償金の支払いと引き換えに取引を迫った事もありました。常態化しているのでしょう。
調査報告によるとこの発言を聞いて妊婦が卒倒しており、また治安隊に血が出るまで殴られていた事から、「夫婦は暴行死した」というデマがネットの掲示板や微博で拡散され、事件現場近くにいた四川人を動員する原動力になったというのも、それほど無茶な話ではありません。
■環球時報「デマと言論の自由は違う」
今年に入って可視出来るデモや暴動が増えましたが、デモを激化させたり暴動のきっかけとなる「デマ」を発信する奴がいなくなれば、デモや暴動みたいな治安に予算を割かなくてもいいのではないか、未然に防げるのではないか、といった思いがにじみ出た社説が環球時報から出ています。
社説「中国社会はデマに振り回されることは無い(環球時報、2011年6月18日)
「中国社会は旗幟鮮明にデマと闘争をしなければならない」と、四・二六社説を髣髴とさせる言い回しに始まり、「デマと言論の自由は違う」「社会に与える結果には責任を負わなければならない」と、切々とデマの危険性について語る環球さん。
陳某の件しか触れられていませんが、恐らくは冒頭に紹介した「独自調査」も視野に入れた論評だと思います。調査に携わった学生たちは拘束されていますが、デマを流したとして裁かれるのではないでしょうか。
「公式情報以外は全てデマ。異論は認めない」というこれまでの姿勢を改めて主張した社説ですが、デモや暴動に至った原因は別にあり、「デマ」があろうがなかろうが原因の根本的な見直しが無ければ、デモや暴動は今後も起こり続けるでしょう。
その辺りを全部すっ飛ばして、デマは良くないと呼びかける社説には空虚なものしか感じません。結局、党中央が最近強調している「社会管理」という言葉は、単なる言論統制や規制強化の字面を変えただけに過ぎないのだなと感じてしまうのです。
*当記事はブログ「中国という隣人」の許可を得て転載したものです。