中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年06月22日
■日ロ提携の衝撃、中国メディアも速報
日ロ提携のニュースは、北京放送を初めとした中国国内メディアでも報じられました。中国にとっては日本に先を越されたわけであり、大変な衝撃でした。実は中国も同時期にロシアへのエネルギー攻勢をかけていました。5月30日から6月3日まで王岐山国務院副総理がロシアを訪問し、第7回中ロエネルギー交渉代表会談に臨んでいたのです。
王岐山副総理はロシア訪問中の5月31日、中ロエネルギー交渉代表会談をロシアのセチン副首相と共同主宰し、天然ガスに関する「重要な共通認識」を達成しています。同日にはプーチン首相とも会見しました。
■ロシアとの中国の原油貿易にトラブルあり
中国の石油天然ガス集団公司と、ロシアの原油輸出パイプライン運営会社「トランスネフチ」、石油大手「ロスネフチ」との間で、今年に入り中国向けの原油の輸送代金支払いをめぐってトラブルが発生していました。ですから、この時期に会談を行う最大の目的はやはりこのトラブルの解決だったことは間違いありません。
「香港文匯報」は、ロシアのRIAノーボスチの報道を引用。「中ロのパイプライン費用に関する紛争はすでに成功裏に解決した。王岐山国務院副総理は31日、モスクワでロシア側代表と原油輸送費用に関して一致を達成した。中国側はロシア国内の分も含め、ロシアの中国向け原油の全行程の輸送費用を負担することに同意した」と伝えています。
また「中国側は『トランスネフチ』『ロスネフチ』に対し、滞っていた分の費用を全て支払った。これにより、中ロの石油輸送費用に関する紛争は円満に解決した」と未払い分についても解決したと報じました。
■寝耳に水の日ロ提携
このような「成果」を携えて王岐山副総理は意気揚々と帰国しました。その2週間後に、胡錦濤主席も6月15日から17日にかけて、ロシアを訪問し、プーチン首相やメドベージェフ大統領と会談しました。順調に事は運んでいると、中国側は考えていたことでしょう。
ゆえに日ロ提携のニュースは、中国政府に大きな衝撃を与えたことは容易に想像できます。しかも胡錦濤主席の訪ロ中にこのような報道が出たのですから、エネルギー交渉に携わった王岐山副総理だけでなく、胡錦濤主席の面目も丸つぶれになってしまったわけで、中国政府の内心は煮えくり返っているに違いありません。
■本当は未解決だったトラブル
その一方で、RIAノーボスチは21日、「6月初めに開催された中ロの政府間交渉ではこの問題は完全に解決されておらず、交渉はまだ続けられている。中国側はすでに未払い分の大部分を支払っている」と報じました。
この報道を見る限りは、先月の王岐山副総理訪ロの際の支払いですべてが終わっていたわけではないことが分かります。そればかりか、未払い分が支払われなければ訴訟も辞さないとロシア側は強硬姿勢を強めているようです。
ここまでみてくると、誰もが「王岐山副総理が先月末にロシアに乗り込んだのは何だったのか」という疑念を持ってしまうのではないでしょうか。極端な言い方をするならば、王岐山副総理の交渉の失敗、「失点」になってしまったともいえます。
中国のエネルギー政策の今後にも重要な意味を持つ話ですが、一方で王岐山副総理の失敗が来年の人事にどう響くのかも注目したいポイントです。
*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。