中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年06月24日
■メディアが使い出した「第一列島線」という言葉
ところが1980年代に入り、中国がこの第一列島線を戦略的防衛ラインにしているとささやかれ始めると、批判を避けるため、あえてこの第一列島線の話題を避けるようになります。つまり「第一列島線は西側が勝手に引いたものであり、根本的に存在しない」というのがこれまでの中国政府の立場だったのです。
これまで中国のメディアでこの「第一岛链(第一列島線)」という言葉が出ることは本当にまれでしたし、使われたとしても、カッコつきで紹介されることがほとんどだったのです。それが最近になると、メディアは「第一岛链(第一列島線)」という言葉を頻繁に使用するようになりました。いまだに「第一岛链」とカッコ付きではありますが、特筆すべき変化です。
■変化のきっかけは西太平洋での演習と日本メディアの反発
変化のきっかけとなったのは、今月6月中旬に西太平洋で行われた中国海軍の演習、そしてそれに伴う中国艦船の動きに対する日本のメディア報道でしょう。この報道に対して、中国国内メディアは現在大々的に反論しています。
最も象徴的な反論は、6月22日付北京日報が掲載した羅援・中国軍事科学学会副秘書長の論文です。羅副秘書長は、「中国の海外での利益が日増しに増加するにつれ、海上通路の安全が中国の経済発展に果たす重要性は日増しに高まっている。中国海軍が『第一列島線』を突破することはどうしても必要なことであり、合理的・合法的である」と論じたのです。
1.軍事力を動員して他国の玄関で軍事演習を行っている国はあるのに批判する人はいない。その一方で中国が定例の軍事演習を行うと批判する人間がいるのはなぜなのか。
2.海上の通航の自由を持ち出して、世界各地で横暴な振る舞いを行っている国があるのに、中国は航行の自由の権利はないのか。
3.ある国は砲艦外交を行い、他国で武力を見せびらかしているが、中国はいかなる国に対しても脅威にならないことを再三訴えている。なぜ演習を行ってはだめなのか。
4.国力の向上に伴い、「第一列島線」を突破し、周辺海域や地理的状況について熟知しないのならば、中国は国際的な救援活動や、海賊取り締まりなど非伝統的な安全問題に対処する活動ができないではないか。