中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
■ストライキの背景
ストライキが起きたのは、番禺区化龍鎮眉山村にある世門ハンドバック工場。バーバリーやDKNYなどブランドバックのOEM生産を手がけており、製品はすべて輸出用だという。高級品を作っている一方で、出稼ぎ農民である従業員の待遇は劣悪だった。月給は最低賃金と同じ1100元(約1万3800円)。しかもさぼらないように厳しくチェックされ、トイレは4時間に1回だけしか許されなかったという。
こうして従業員の不満が高まったが、最終的なきっかけになったのは工場長の「変態行為」だと伝えられている。さぼっている従業員を捕まえようと女子トイレの中にまで侵入してきたことが、「まるでのぞきではないか」と反発を呼び、同工場5000人の従業員の気持ちを一つにしたという。また、ストライキを受けて韓国人管理職が「月給を30元(約375円)ばかりあげてやれば、どうせ黙るだろ」と暴言を吐いたことも伝えられているなど、韓国人管理職と中国人従業員の間に、心理的な溝が深まっていたとも報じられている。
■本当に「変態的行為」が問題だったのか?
もっとも、中国のストライキでは、「悪い経営陣の悪辣非道っぷり」をあることないこと伝えるというのは、従業員側の常套戦術。女子トイレ突入や暴言が本当にあったのかどうかについては保留しておくべきだろう。ただ、マジメな学級委員モードになってしまった管理職が、働かない従業員に腹を立てて無茶な労務管理をするというのは、韓国人ならずともありうる話のような気もする。中国で働く日本人管理職の方は気をつけたほうが良さそうだ。
今回のストライキについては、発生直後の20日からネット掲示板やマイクロブログで話題となっていた。23日に香港英字紙サウスチャイナモーニングポストが報道。他の海外メディアも相次いで報じた。その23日に工場側は労働者と協議を妥結し、ストは収束したという。具体的な条件は伝えられていないが、積極的にネットを利用して情報を流した従業員側の戦術が実ったというところだろうか。
■物価高騰とストの蔓延
広東省といえば、つい先日にも潮州市、広州市増城市で大規模な暴動が起きたばかり。今回のストライキも含め、いずれも出稼ぎ農民が関係している。インフレ、労働コスト上昇、輸出企業の苦境……などがもっとも先鋭的に表れるのが広東省ということだが、すでに他地域でも少なからぬ数のストライキがあるようだ。6月はさらに物価が高騰するとも予測されており、しばらくは広東省を中心に激化する傾向に向かうのではないだろうか。