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「ボクのパパは県長だ!パパの言葉は法律そのものなんだ!」副県長の息子らが一般市民をめった切りに―中国山西省

2011年06月26日

2010年を代表するネット炎上事件となったのが「李剛事件」だ。

飲酒運転で女子大生2人をひいて1人を殺し、もう1人に重傷を負わせた揚げ句、捕まる際に「できるものなら訴えてみろ!ボクのパパは李剛だぞ!」と歴史に残るフレーズを吐き捨てた。李剛は保定市の公安局副局長。父の力を借りれば、事件など簡単にもみ消せるという脅しだった。
(記事:「「ネットの声」は勝利したのか?中国ネット界を震撼させた「李剛事件」に判決」参照)

さて、ある意味、その李剛事件を上回るすごい事件が登場した。今度の決めぜりふは「ボクのパパは県長だ!この永和県では法律そのものなんだ!」、だ。

 
Knives / sfllaw


■ネットで広まった「ひどい事件」

事件が最初に伝えられたのはネット掲示板の書き込み。その内容は次のようなものだった。

先日、山西省臨汾市永和県で交通事故が起き、馮双貴・副県長のしゅうとめが死亡した。事件後、現場付近に住む柳文は、事故が起きた現場で爆竹を鳴らした。邪気をはらう現地の風習だという。だが、これを聞きつけた馮副県長の家族は不満を持った。

しゅうとめが出棺された翌日、馮副県長の妻、息子、妻の弟とその嫁の4人が刃物を持って柳の家に乱入した。柳を切りつけ重傷を負わせ、家中の家具をぶちこわした。柳は「法律はないのか?なぜ勝手に人の家に入って乱暴をするのだ?」と問いただすと、馮副県長の息子は「パパは県長だ!。この永和県では法律そのものなんだ!」と言い放ったという。そして明日も殴りに来るからな、と脅して帰っていった。

重傷を負った柳は臨汾市の大型病院まで運ばれて治療を受けた。移動の途中、出血が多く意識を失うほどだった。事件後、柳の家族は馮副県長らを訴えようと警察や裁判所に向かったが取り合われることはなかった。県高官にひざまずいて頼み込んで、ようやく警察は捜査を開始するありさまだった。

5月下旬ごろから、上記内容の書き込みがネット掲示板やマイクロブログを通じて広がり話題となっていた。


■官製メディアの報道で事実と確認


ネットではそれなりの話題になったにもかかわらず、中国メディアが一切報道しようとしない。当局はもみ消しすることを決めたのかと思っていると、23日付新華網が突然、この事件をとりあげた。記者の現地取材によって、ネット掲示板の話はほとんどが事実であることが確かめられたという。

交通事故が起きたのは5月10日のこと。そして柳の家が襲われたのは17日と日付も確認された。取材時点で柳はまだ入院中だったという。永和県公安局の李偉局長は新華網の取材に答え、暴行を振るった4人はすでに軽傷害容疑で拘束したと話した。

ネットでは、「パパは県長だ!この永和県では法律そのものなんだ!」という発言が本当にあったのか、馮副県長は捜査を妨害していたのではないかという点に注目が集まっていたが、この点についても答えている。第1に問題の発言は、加害者、被害者双方が否定しており確認できないということ。第二に副県長の関与に関しては、通信記録などを調べた結果、関与はなかったとの結論に達したという。

もっとも馮副県長についても無罪放免とはならなかった。新華社報道があった翌日の24日、臨汾市共産党委員会は記者会見を開き、5月27日から事件については調査していたと発表。馮副県長の関与は認められないものの、妻や息子への教育を怠ったことや事件後に被害者への賠償やなぐさめを怠ったことは問題だったとして、県共産党委員会常務委員、常務副県長の候補者資格を取り消したと発表した(新華社)。


権利を守るためにみんなで煽ろう!


きわめて単純化すると、この手の事件が起きた時の当局の態度は次のような流れとなる。

初期:無視

盛り上がる

中期:ネット検閲で封じ込め

まだ盛り上がる

終盤:トカゲの尻尾切り OR 徹底的な弾圧

革命や暴動を煽るような話か、高官がらみでもなければ、トカゲの尻尾切りで終わるケースが少なくない。よって、問題を解決したい当事者にとってはいかに世論、とりわけネット世論を盛り上げられるかがカギとなる。今回の件では、「パパは県長だ!この永和県では法律そのものなんだ!」という発言が大ヒットしたと言えるだろう。誰もが李剛事件を思い出すフレーズゆえに、人々の関心を引きつけられるからだ。

26日付紅網の記事「「ボクのパパは法律そのもの」を一緒に煽ろうぜ」は、問題の発言が事実だったのか、捏造だったのかはどうでもいいことだと指摘。注意すべきはこの発言を煽ったことで不正があばかれたことだとして、今後、事件がどのように裁かれるのか、みんなで一緒に煽って注目するべきだと主張している。


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