2011年6月、パリで開催された国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産委員会は、2011年の審査結果を発表した。日本からは平泉が文化遺産、小笠原諸島が自然遺産に認定された。中国は浙江省杭州市の西湖が文化遺産に認定された。黒竜江省の火山堰止湖・五大連池も申請していたが、最終審査の前に辞退した。
*西湖。
ユネスコ公式ウェブサイト。
■日本が14位に浮上、国別ランキング
今回の発表で日本の登録数は16件となり、国別順位ではカナダとスウェーデンを抜き14位に浮上した。中国は41件で3位のまま。
1位:イタリア 46件
2位:スペイン 42件
3位:中国 41件
4位:フランス 35件
4位:ドイツ 35件
14位:日本 16件
*「世界遺産登録数 国別ランキング(ALL ABOUT)」を参照。2011年認定分を追加した。
ユネスコ公式サイト掲載の西湖の登録理由は以下の通り。
杭州西湖文化景観
杭州西湖文化景観(中国)は西湖と三方を囲む山々によって形成されている。9世紀以来、西湖の景勝は多くの文化人、詩人、芸術家を引きつけ、その作品の源となった。区域内には多くの廟、台、宝塔、林があり、花や草木、それに湖のほとりや島々が杭州に美しい風景を与えている。数百年来、西湖の景勝は中国、さらには日本や韓国の庭園デザインに影響を与えてきた。景観建設の文化伝統において、西湖は天人合一という理想を描いた最良の回答である。
■世界遺産の責任
世界遺産認定の正式発表を受け、各社が論説記事を発表しているが、日本の日経新聞と中国の新華社が似たようなタイトルの記事を掲載しているのが、興味深い。
世界遺産を持つ誇りと責任(日経新聞、2011年6月27日)
世界遺産申請の成功は名誉であり、そしてなにより責任である(新華社、2011年6月25日)
いずれも認定後の保護の問題をとりあげたもの。私のように下卑た人間だと「世界遺産……観光収入……経済効果……ウヒヒ」となりがちだが、日中ともに世界遺産の保護、維持が重要であり、下手を打つと認定を取り消されるかもという意識が広がってきたようだ。
もっとも中国では世界自然遺産に認定された怒江でのダム建設を強行し、ひんしゅくを買っているのだが。また、最終段階で審査を辞退した五代連池でも「保護区に住んでいるやつらの住宅を撤去してやりましたわ。警官の邪魔になりますから。保護しまっせ。わはは」的な記事が自慢げに報じられている。(
新華網)
(辞退の背景については報道されていないが、落選の空気を悟ったということだろうか?)「(経済建設に矛盾しない限りは)
自然に優しく!人間には全力で厳しく!」という悲しい状況が続いているようだ。