中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年06月27日
■成長促進剤を使うのは当たり前
工場の片隅に摘まれていたのは複数の薬品。成長促進剤、漂白剤、防腐剤、根無しもやしを作る薬品などがそろっている。工場の経営者に話を聞くと、「薬品を使うと成長が早くなるし、防腐効果もあるんだ」と胸を張って答えた。経営者によると、もやし生産者はすべて同じように薬品を使っているという。
ある豆製品販売店経営者に話を聞くと、通常、もやしを育てるには夏ならば3~4日、冬ならば1週間ほどかかるが、薬品をつかうとその時間を半分に短縮できるという。しかも太く、色も白いもやしが育つので売れ行きもいいのだという。
■当局の手抜き検査
南方週末記者は取材内容を東莞市総合執法局に通報した。30分後、制服を着たスタッフが到着。もやし工場の検査は初めてとのことで、工場に老いてある薬品が違法なものかどうかについては検討がつかないと話していた。さらに1時間後、市食品安全委員会弁公室職員も到着。検査のためのサンプル品回収が行われた。
食品が用意したビニール袋にもやしを詰めようとすると、工場関係者が一言。「サンプルを取るなら、向こうのから取ってくれない?こっちのだと絶対に基準値を超過しちゃうよ。」驚いたことに職員もその言葉に素直に従って、関係者が指さした桶からもやしを採取してた。記者が「そんな手抜き検査でいいんですか」と詰め寄った後、ようやく別の桶からも採取していた。
■化学薬品より怖い、当局の無気力っぷり
成長促進剤、根無しもやしを作る薬品(ホルモン剤)、漂白剤が使われているようだが、基準値に合致したものなのかどうかは不明。回収されたサンプルも現在、検査中だという。以前にも取り上げたことがあるが、最近中国では「化学薬品、食品添加剤=悪」という考えが広がりすぎていて、ミスリードを誘うような誇張された記事も少なくない。このもやし工場の製品が本当に危険なものなのかについては保留したいところだ。
だが、個人的に面白いと感じたのは当局のやる気のない検査っぷり。南方都市報の記事も工場関係者に言われるがままに動くダメっぷりを強調する書き方だった。全部、この調子で検査しているとすると、ずいぶんと漏れが多そうだ。
なお日本で販売されているもやしは、種子はほとんどが中国製だが、生産は日本国内で行われている。有名ブランド・雪国まいたけのウェブサイトによると、同社製品の「雪国もやし」は種子と水だけで育て、一切の薬品を使用していないという。