禁止すればするほど増える!?―ゴルフ場と農地との間でゴルフって全くやったことがないのでその面白さは分からないのですが、とにかく中国でもプレーヤーが増えている様子。中国在住の日本人ビジネスマンも多くが楽しんでいるようです。
それなら、ゴルフ場もどんどん作られているのではと思われるかもしれません。その通りなのですが、実は2004年1月から最近まで原則新規ゴルフ場建設禁止だったって知っていましたか?禁止されているにもかかわらず増え続けるゴルフ場。その攻防の影にも実は三農問題(農業、農村、農民に関する問題)がありました。というわけで、まずは
6月23日付
南方週末及び関連報道を簡単にご紹介します。
Shanghai (China) - Lujiazui Golf Club / Marc van der Chijs
*やっぱり中国でもゴルフってこういうイメージになっちゃいますもんね…。
*当記事はブログ「北京で考えたこと」の許可を得て転載したものです。
■禁止すればするほど増えるゴルフ場
2004年1月に国務院弁公庁は「新設ゴルフ場の暫定停止に関する通知」を公布した。しかし、ゴルフ場の数はむしろ増えるばかり。当時170コース程だったのが今では600余りとなった。今年5月に公布された行政文書がこの事実を認めている。
「ゴルフ場があれば投資するよ。」
「(内陸の投資環境を聞かれて)全部整っているが、ただゴルフ場だけがないなぁ。」
こうした声に押されて地方政府はゴルフ場の建設ラッシュを続けている。
そもそも何故建設は禁止されたのか?2004年当時を思い返せば、きっかけとなったのは山東省青島市即墨市で起きた事件だった。1000ムー(約67ヘクタール)もの良質の耕地が全てゴルフ場に変えられてしまったのだ。これが明らかとなったことがきっかけで建設禁止の通知が公布された。
その後は建設認可の申請書類から「ゴルフ場」という名は消えたものの、「リゾート村」「スポーツレジャー公園」「都市緑地」など名前を変えて建設は続けられた。ただし「耕地は政府にとって譲れないラインだけに、それに触れるのはリスクが高い。今、ゴルフ場用地となっているのは都市の緑地や荒れ地、砂浜などだけだ」とあるゴルフ場経営者は話している。
■皆が管理しているけど、誰も管理できてない体制
監督する方にも問題がある。
国土資源部が管轄するのは耕地だけ。耕地を潰してゴルフ場を建設しているケースしか取り締まることができない。しかも情報源として頼りになるのは衛星画像と地方政府、そしてメディア報道しかなく、監視は行き届いていない。
謝輝・国土資源部新聞処処長は「明らかな耕地占有が見つかれば我々は動ける。それ以外のケースでは、林が潰されていれば林業局、草原だったら農業部、都市緑地や公園ならば住宅都市農村建設部と管轄が違う。なによりゴルフ場関連業務はずっと発展改革委員会なのだ」と縦割り行政の弊害を訴えた。
禁止令公布から7年が過ぎた。その効果はというと、おそらく耕地を利用したゴルフ場が少々減った程度。現実には複数の政府部局の権限にまたがりながらも、結局は誰も管轄できないゴルフ場が従来の倍以上に増えただけというところに収まった。
■5回ダメって言われちゃったけど、まだ作っちゃってます……。
26日付
新華網によると、河北省では当局が5回も建設停止を求めたのにまだ作っているゴルフ場まであると言います。管轄する河北省鹿泉市の国土関係部門は、「エコツアリズムプロジェクト」というお題目で申請されたためにゴルフ場だと気づかなかったとのこと。
発覚した2010年3月から合計5回もの建設停止を命じるも、ディベロッパーは無視し続け、今も建設中だそうです。政府が強力な権力を持つ中国で、市政府からこれだけ叱られても平気だということは、もっと上の「お墨付き」をもらっているのでしょう。
おそらく後ろ盾よりも上級部局であろう新華社が報道したことによって、ようやく収まるかもしれない……といったところでしょうか。この記事に関してマイクロブログでは「住民を立ち退かせる時の、(政府の)気合はどこに消えたんだ!」なんていうコメントも。うーん、ごもっともですよね。
■ゴルフ場建設の混沌から見えるもの
中国政府は人民の胃袋を守るために、「最低でも耕地面積18億ムーを確保する」ことを至上命題としています。しかし、ゴルフ場という大型建設プロジェクトすら「見つけられない」ずさんな土地用途管理体制で大丈夫なんでしょうか?耕地は本当に18億ムー以上あるんだろうか……実はもう割り込んでいるのでは……と疑いたくなります。
ゴルフ場問題を通じて、鼻先にぶらさげられた利益を前にして、強いんだか弱いんだかわからなくなってしまった地方政府の姿が見えてきます。あるいは弱いふりをして中央政府に隠れて、利益を貪っているのかもしれませんが……。
ゴルフ場建設には、とにかく広大な土地が必要となります。しかも残念ながら、中国では「貴族のスポーツ」と化してしまっているのです。となれば、土地収用問題、つまり「立ち退き」が社会問題となっている中で、ゴルフに対して世間が厳しい目を向けるのも必然です。そうした状況下で、利益と原則、そして中央と地方のいたちごっこが今後も続くことになりそうです。
*当記事はブログ「北京で考えたこと」の許可を得て転載したものです。