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2011年06月28日
世界には1つの中国しかない。中華人民共和国は中国を代表する唯一の合法的政府である。台湾は中国の一地方の省にすぎない
■精華大教授の論文が「1国両府」論と話題に
独ラジオ局・ドイチェ・ヴェレ中国語サイトによると、楚教授の論文は「中台は『1中各表(1つの中国を両岸各自が主張すること)』となっている現状を取り決めによって維持し、これによってそれぞれ『1つの中国における(相手側の)中央政府』を互いに受け入れ、互いに認め合うべきだ」という内容とのこと。
「1中各表」は、特に馬英九総統を中心とする国民党政権が主張してきた論です。「海峡両岸(中台)が1つの中国の原則を口頭の形で堅持する」ことを柱とする「92年コンセンサス(1992年に両岸が達成した共通認識)」を尊重しつつも、「1つの中国の考え方を守っても、台湾の独自性は主張しうる」という考えを根幹に据えています。
ただ、「1中各表」の「各表」が、「大陸」と「台湾」なのか、「中華人民共和国」と「中華民国」なのかはあいまいで、解釈の余地が残されています。 この「1中各表」の考え方自体は真新しいものではありません。「各自が1つの中国を認めることは差し支えない」という考えから、大陸もこの考えを認めています。
しかし、これからさらに一歩踏み込んだ「1国両府」論が、大陸の学者から出るというのは極めて異例と言えます。というのは、これまで大陸側は「台湾には政府は存在しない」という立場に立っていたため、台湾政府を「大陸と同等の政府」として扱うことはタブーだからです。
■馬英九「両岸の論述操作は成功した。」
さらに馬英九総統はメディアの単独インタビューに答えた際、「私が着任して以来推進してきた『互いに主権を認めないが、政権統治を互いに否定せず』とする両岸の論述操作は成功した。大陸の学者でさえ『1国両府』の主張を行ったのだ。いろいろな主張にはそれぞれ利点と欠点があるし、話し合ったり、討議してもいい」と話したのです。 この発言に、台湾メディアは騒然となりました。
そしてこの発言が、台湾独立を主張する民進党の議員を激怒させました。陳亭妃立法議員は「総統は『1中各表』から『1国両府』に、その次はおそらく、中国統一のことまで話し合おうとしているのではないか」と激しく批判しました。
■騒動をみかね精華大教授が釈明
このような騒動に発展したのを見かねたのか、楚教授は23日、大陸のメディアである「環球時報」の取材に応じ、「『1国両府』なんて言っていない」などと釈明しました(自由時報)。
楚教授は「メディアがとりあげた論文は、昨年7月に米カーネギー平和基金会のシンポジウムでの発表を元にしたもの。すでに以前にも同様の論文を発表している」と話し、今回の論文が決して新しい発想ではないこと、今回の騒ぎは台湾メディアのミスリードであるとの考えを示しました。
「『1国両府』論自体は李登輝総統時代に発表され否定されている古い考え方。今の台湾に受け入れられるわけがない。楚教授の論文は、台湾世論の反応を試す一種の『観測気球』だった」と台湾メディアは一連の騒動を分析しています。
台湾メディアの分析には私もうなずけるところがあると考えています。そもそも、中国共産党創設90周年を来週に控えたこの時期に出てきたニュースであることを思えば、それ以外の解釈はないでしょう。裏を返せば、台湾問題は90周年を迎えた中国共産党にとっての「唯一の汚点」だとみなしているとも読み取れるのではないでしょうか。
*当記事はブログ「中国語翻訳者のつぶやき」の許可を得て転載したものです。
双方が主権を持った国になれば、国際問題として定義しやすくもなるし、国連もまともな対話を求めるようにできるはずなのにねぇ・・・。