中国、新興国の「今」をお伝えする海外ニュース&コラム。
2011年06月28日
■中国メディアを通じて見る米中会談
これまでの米中の動きと主張を見れば、日本メディアの報道ももっともですが、中国メディアを観察するとまた違った側面が見えてきます。環球網が『中国新聞網』『人民日報』『環球時報』など各媒体の報道を転載していますので、これを参照しました。
まずは『中国新聞網』ですが、「米中関係は順調に発展している」という無難なもの。この会議は胡錦涛主席が1月に訪米した成果であり、そのおかげで米中両国はお互いの関心のある問題について話し合うことができたというだけの内容。
次に『人民日報』ですが、如何にも中国の公式見解らしく極めて格調高いもの。アジアの重要性や世界最大の発展途上国である中国と世界最大の先進国であるアメリカ、そしてGDPの最も大きい2国が話し合うことの必要性などをとうとうと論じていますが、具体的なことにはほとんど触れておりません。
ある意味一番面白かったのが南シナ海問題が話題になったことにまで言及していた『環球時報』です。中国周辺の外交競争に積極的に関与するようにアメリカ外交が変化してきたとの人民大学国際関係学院・時殷弘教授のコメントを掲載しています。
ただし、時教授の発言にしても、「アメリカは、南シナ海問題において、天然の複雑さを利用している。中国も極端な方法や強硬な対応を取りづらい」という内容で、かなり自制的な発言でした(もともと時殷弘教授はあまり過激な発言をする方ではありませんが)。
これらの報道を見るに、中国政府は、あまり南シナ海問題を激化させるつもりがないこと、特にアメリカとの関係悪化を望んでいないことがわかるかと思います。もっとも軍部がどう考えているかは別の話ですし、軍部がどれだけ政策に影響力を持つかも、別問題ではあるのですが。
■中国と米国はともに日本と戦った戦友だ
このほかにも『環球網』は、共同通信の配信記事「米中高官が真珠湾を訪問米提案、沈没戦艦記念館に(東京新聞)」を翻訳、転載。記事「日本のマスコミはアメリカが中国外務副大臣をパールハーバーに招待したことを報道、その意図が憶測を呼ぶ(環球網)」として掲載しています。
キャンベル次官補と崔天凱次官がアメリカ側の提案で共に真珠湾を訪問したこと、旧日本軍の真珠湾攻撃で沈没した戦艦アリゾナにつくられた「アリゾナ記念館」を見学したことを伝えるとともに、同記念館には1997年10月に当時の江沢民国家主席が訪問したこと、その際には第二次世界大戦では共通の敵・日本と戦った歴史を強調して日本をけん制すると共に、米中協力の重要性を強調してみせたことなども取り上げています。
当時は靖国参拝問題などで、日中関係は最悪の時期でした。日本に打撃を与えるため、アメリカの抱き込みを図ったというのが江沢民の行動の意図でしょう。わざわざ共同の記事を翻訳して紹介したのも、アメリカとことを構えるつもりはないというメッセージではないでしょうか。
■
さて、ここからはある意味蛇足です。上記共同通信記事には次のような記述があります。、
米側が中国側に真珠湾へ行くことを提案した意図は不明。しかし南シナ海の領有権争いが激化しているこの時期に、旧日本軍の攻撃で太平洋戦争の発端となった場所の訪問を設定したことに対し、今後さまざまな臆測を呼びそうだ。