先日話題となったのが「日本の科学者が糞便からハンバーグを作る技術に成功した」というニュース(
ギズモード・ジャパン)。ちょっと信じがたいお話ですが実際のところどうなんでしょうか?
さて、隣国・中国ですが、糞便からハンバーグほどのマジックではありませんが、運用面では日本のはるか先に到達しているリサイクル技術があります。それが「下水油」。「残飯から食用油を作る技術」が開発されたのはもうはるか昔ですが、今や改良に改良を重ね、「検査しても通常の食用油と違いがわからない」レベルに到達しています。年200~300万トンが食卓に上っている、なんていう推計もあるのだとか。
*食用油精製の為に集められた残飯。
■気がついたら下水油は一大産業になっていた
以前、中国の「下水油」(中国語では「地溝油」)ネタが日本でも結構、話題となりました。下水からさらった汚物を材料に食用油を作るというもの。一時は中国でも相当話題となり、「外食用にマイ油を持ち歩くライフハック。レストランに油のボトルを渡してそれで作ってもらえ!」みたいな記事もでるほどでした(レコードチャイナ)。
とはいえ、「下水油の使用状況について厳しく検査したが、使用店は見つからなかった(キリッ」的な政府発表などが繰り返されているうちに、だんだんと「下水油」に対する恐怖も薄らいできたように思います。
が、先日、新華社が発表した記事がすごいのです!
残飯から食用油を作る産業チェーンが完全に整備されていること。
技術改良の結果、通常の食用油とまったく変わらないレベルの下水油が完成していること。
怪しい屋台だけではなく、スーパーや卸市場に出荷されていること。
下水油を売っているのにQS認定(品質保証認定)を受けた企業まであること……。
読むと、もうウギャーとなる内容です。
■残飯リサイクルの旅
では、下水油の流れについてご説明。ちょっとミスリードなのが下水油という言葉。下水を油にしているというよりは、レストランの残飯やブタを裁いた後に残る内臓などが主な原料なようです。
レストランで出る残飯や生ゴミ(中国語では「泔水」)ですが、専門の買い取り業者がいて集められます。残飯はブタのエサにするというのが名目ですが、その前にまずがっつりと煮込み、油分を分解させます。油分(泔水油)以外の残飯、生ゴミはブタのエサに。
抽出された油分はそのままでは不純物がまじっており、ばれてしまいます。というわけで、気合いを入れて濾過することで、クリーンな下水油が完成するという仕組み。おそらくこの手順が最大の「技術革新」であり、すでに通常の食用油と比べても分からないレベルに到達したのだとか。取材を受けた下水油工場の製品は、普通のボトルに詰められてスーパーやら卸市場へと出荷されていきます。
■下水油のイノベーション!
記事によると、下水油産業はすでに一大産業となっており、北京市だけで数千人に雇用を提供。生産額は年数億元に達しているのだとか。
また、汚い小屋の中で残飯を煮込んでいる……といった零細企業ではなく、最新鋭の機器をそろえた大規模下水油工場も登場。なんと日産10トンという生産能力を誇ります。クオリティも上々。同工場の責任者は「実験室にでも持ち込まないかぎり、ばれないぜ!」と胸を張ったのだとか。
また衛生許可証など関連書類をばっちしそろえている事例についても紹介されています。手入れにあっても怖くない!書類はそろっているし、QS認定(品質安全認定)までゲットしている。なにより「大丈夫さ。ほら、後ろ盾がいないと、下水油作りなんてできないしね。ムフフ」といった、闇の構造があるそうで。
■下水油報道の罠とまあ、恐ろしい話がオンパレードなのですが、下水油ネタについては気をつけないといけないことが。一口に下水油といいましても、実はいくつかの種類があります。
(1)残飯から作った油
(2)動物の内臓などから作った油
(3)何度も何度も使われて劣化した油
おおむね、この3種類に分けられるのですが、記事内で言うところの下水油がどれなのかはいまいち不明。残飯の回収ルートの話をしていたかと思うと、動物の内臓を原料に油を作っている大手工場の話がでてきたりする始末。「スーパーに出荷されている下水油は動物の内臓だけを使ったハイクオリティ下水油だけ。残飯原料はない!」みたいな裏話があるんじゃないかなーと思ったり。
ま、どちらにしろ禁止されているモノですし、なかなか全容の把握は難しいのかもしれませんが、もうちょっと細かいところが知りたいという欲求もあります。「オレが作る下水油はヘルシーだ!メディアはバカなことばっかり書き散らかしている!」とか実名告白する人、出てこないかなぁ。
*写真は
環球網の報道。他写真多数。