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2011年06月30日
■備えあれば憂いなし、死傷者ゼロの学校があった
2008年5月12日、四川大地震が発生した。マグニチュード8の大地震により、約9万人が死亡する惨事となった。特に「おから工程」と呼ばれる手抜き工事が原因で、学校校舎の倒壊が相次ぎ、多くの子どもたちが犠牲となった。
葉先生が勤めていたのは、震源に近い四川省綿陽市安県桑棗中学。地震により付近の住宅はほとんど倒壊したが、校舎8棟の被害は部分的な倒壊にとどまった。実は校舎の強度不足を知った葉校長が1997年から補強工事、震災対策を続けていたという。
それだけではない。中国では地震の避難訓練が十分に行われておらず、多くの学校で大混乱が生じ、混雑した階段で人が動けなくなる事態も起きた。範美忠という教師は生徒を捨てて一人だけ逃げ出し停職処分に。「逃げ足の範」という不名誉なあだなを頂戴し、批判の的となった。
一方、桑棗中学では震災当日に葉先生がいなかったにもかかわらず、生徒2200人、教師100人は整然と避難。わずか1分36秒で全員の避難を終え、一人として死傷者を出さなかった。日頃から避難訓練を続けていた成果が発揮されたのだった。
■有名人になっても変わらなかった
震災後、葉校長は「史上最牛校長」(史上最強の校長)とたたえられ、一躍有名人になった。その人気に目を付け、年俸15万元(約188万円)で引き抜きたいと声をかけられたというが、葉校長は拒絶。有名になる前と変わらず、校長としての職を全うした。
今月3日、葉校長は脳溢血で倒れ病院へ運ばれた。過労が原因と見られる。「ここ数カ月忙しすぎたな。あんまり寝られなかった。2時間だけ寝かせてくれれば大丈夫だから。」これが葉校長が残した最後の言葉となった。
校長に敬意