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2011年07月01日
■検査なんか怖くない!
問題肉を告発したのは、生泰社の代理店となった党さん。2010年10月に加盟費5万元(約62万5000円)を支払って代理店となったが、わずか3カ月後に「問題肉」が発覚。とんでもない実態を知り、商売を続けられなくなったと話している。
今年1月18日、「雨潤食品」と書かれた冷蔵トラックが陝西省渭南市澄城県の雨潤食品専売店前に止まった。積み荷の豚肉を下ろそうとしたところで、県商務局調査員が登場。トラックを付近の食肉工場へと移動させ、抜き打ち検査を行った。
その結果、甲状腺、副腎、病変リンパ腺などの危険部位が切除されていないことが発覚した。「三腺」と呼ばれるこれらの部位には病原体が多いため、切除が義務づけられている。知らせを受け、生泰社幹部2人が出頭。不手際を認め、さて罰金の支払いが必要だとなった時、事態は劇的な変化を見せた。
生泰社の幹部が県商務局のお偉いさんに電話すると、事態は一転。罰金はゼロ。それどころか「三腺」付き豚肉を乗せたトラックもそのまま配送を続けることが許されてしまった。
■工場内でも好き勝手
問題はこれだけではない。在庫を切らした代理店経営者が自家用車で工場に乗り付け、せっかくの冷蔵輸送システムが使わず、そのまま肉を持って帰るということもたびたび。
また工場では政府職員ではなく、従業員が勝手に「検疫済み」ハンコを押しているわ、工場に出入りする車両の消毒も専門スタッフではなく、一般従業員が適当にやっているわと、管理ゼロの好き放題の状況だった。それでもちゃんと消毒証明書、検疫証明書は発行されているのだが。
7月1日、華商報の報道を受け、陝西省政府及び渭南市政府はただちに対応し、調査グループを設立。同時に生泰社に操業停止2カ月の処分を命じた。7月5日までに報告が発表されることになっているが、黒幕まで処罰できるのかが注目だ。
■日系企業は「肉の安全」を変えられるか?
中国では食品安全問題が起きると、「中小企業、闇工場の問題」「企業の大規模化を通じて安全性を高めねば」という決まり文句が登場する。だが、本当に大企業は信頼できるのか。
今回問題となった雨潤食品集団は中国企業500強に入る大手企業。子会社の生泰社も「陝西省最先端の食肉処理場」という触れ込みだった。今年3月の「エアロビ豚」問題では大手食肉製品企業・双匯集団製品も「痩肉精」を使っていたことが発覚したが、今回の事件で再び「大手企業も信頼できない」という認識が強化されそうだ。
(参照:【中国食品】「エアロビ豚」の恐怖!大手メーカーも使用していた化学薬品「新型痩肉精」―中国)
先日、三菱商事、伊藤ハム、米久が中国食品最大手・中糧集団と提携し、養豚及び食肉加工事業に進出することが発表された(レコードチャイナ)。「日本の先進的な管理技術」が安心安全なブランドを作り上げることができるのか、それとも「朱に交われば赤くなる」で同じことになってしまうのか。こちらも気になるところだ。