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2011年07月03日
■上海名門大学同士の仁義なき戦い
そうした中、上海の復旦大学は「不正な手段でうちの学生を盗もうとしている輩がいる」との声明を発表。注目を集めた。2011年7月2日付京華時報、3日付人民網を参照した。
1日、復旦大学は「一部省・市の受験生が騙され志願校を変更させられたことに関する厳正な声明」を発表した。取材に答えた復旦大学学生募集弁公室の徐宏波副主任によると、山西省であからさまな妨害工作が発覚したという。
復旦大学も連絡をとっている優秀な学生のもとに、別の復旦大学関係者を名乗る人物から電話があり、「あー、その点数じゃ厳しいかも。志願校変えなよ」とウソをつかれ、騙されたのだとか。同様のケースは雲南省、寧夏回族自治区、広東省、湖北省などでも確認されている。
さらに事件を炎上させたのは、復旦大学の馮瑋教授がマイクロブログで発したつぶやき。「うちから学生を奪っているのは、上海交通大学なんだぜ」と燃料を投下した。上海交通大学もただちに事実無根と反論し、上海を代表する二大名門大学のバトルに発展している。
■北京大学からも優秀な学生が奪われた
さらにもう一つ、学生獲得バトルで人々を驚かせたニュースがある。
北京市の文系状元(状元とは高考成績トップの意)3人が北京大学を捨て、香港大学への入学を決めたというもの(2日付新京報)。高等教育整備に熱心な香港だが、優秀な人材獲得にも力を入れており、「中国本土の状元が奪われた!」とのニュースは近年、恒例のニュースとなっている。
この3人には年16万香港ドルの奨学金が約束されているというが、取材を受けた状元の1人、梁倩さんは奨学金が決め手ではなく、「異なる教育体制を試してみたかった」と話している。変化しているとはいえ、まだまだ古くささの残る中国本土の高等教育が嫌がられているということもあるのかもしれない。
■日本にはたくさん中国人留学生がいるけれども……
さて、毎年、学生獲得競争のニュースを見て思うのは、日本は何をしているのだという嘆き。いや、もちろん大学関係者は中国にいって勧誘したり、異国での生活をばりばりサポートする体制を整えたりとさまざまな取り組みをしているのだが、超優秀な人材を一本釣りするという手法はあまりないようだ。
日本にやってきた留学生に対して散漫に奨学金を出すだけではなく、高考高得点者に奨学金支給を確約し、ついでに日本語を覚えなくとも英語だけでも単位を取得できるカリキュラムを用意するぐらいの気合いが入った体制を見せれば、まだ日本という国のブランドやアカデミズムの体力を考えても、そこそこ優秀な人材をゲットできるのではと思うのだが。