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2011年07月05日
国家海洋局海洋環境保護課の李暁明課長は、次のように事故状況を説明している。
■2回あった原油漏出事故
最初の事故は6月4日、Bプラットフォーム付近で確認された。石油採掘のために地下に注水したところ、その圧力で原油が海底より漏出したものとみられる。地下への注水を減圧したことにより19日時点で石油の漏出はストップしたという。
2回目の事故は17日、Cプラットフォームで確認された。ボーリング作業中の事故で海底の原油が漏出したもの。セメントで封鎖し、21日には漏出をストップさせた。
■被害と現状
漏出した原油が海上を覆ったが、最悪だったのが13日。158平方キロメートルが覆われた。処理船20隻が出動し、油の除去作業を行ったほか、航空機で油を分解、沈殿させる薬剤を投下した。
事故の影響により蓬莱19-3周囲及び北西海域で深刻な水質汚染が確認されている。840平方キロメートルにわたる海域で、水質は「漁業水域、自然保護区、絶滅危惧種保護区に適合的」という1級水質から、「港や開発区に適合的」な4級水質をさらに下回る劣4級にまで変質してしまった。
蓬莱19-3は現在、石油採掘作業を完全に停止している。
■運営企業の責任
蓬莱19-3は中国海洋石油(CNOOC)と米石油大手コノコフィリップスが共同で運営している。記者会見では石油漏出が確認されるたび、速やかに国家海洋局及び環境保護部に連絡していたことが強調されている。
記者会見では、海洋環境保護法第50条違反により、最大で20万元(約250万円)の罰金が科されることが示された。被害に比べてあまりにも少ない罰金額は波紋を呼びそうだ。もっともこれは民事賠償は含まれていない額。国家海洋局は「養殖業者への影響は確認できていない」と発言しているが、漁業、養殖業、そしてビーチなどの観光業から莫大な補償金を請求される可能性もありそうだ。
■記者会見で触れられなかったこと
記録を読むと、李課長はいかに海洋保護局ががんばって調査したのか、速やかに対処にしたのかを自慢げに説明しているのだが、肝心かなめのなぜ情報を隠していたのかについては一切触れられていない。記者の質問でもこの問題は追及されていないようだ。
最初の事故は4日に確認され、その日のうちに当局に報告されていたという。それから今回の記者会見まで1カ月の事故隠しはいったい誰が主導していたのか?原油流出については6月中旬からネット掲示板、マイクロブログで広がり、7月1日に中国メディアが報道。当局が事実と認めた。もしネットでの追求がなければ、あるいは闇に葬り去るつもりだったのではないか。
また、記者から「すでに付近の養殖業者では魚の大量死が確認されているが?」との質問もあったが、当局は「その情報は認識していない」と逃げている。当面は外資のコノコフィリップスが矢面に立たされることになりそうだが、権利の51%は国有企業のCNOOCが握っているだけに、相応の賠償責任も負う必要があるはず。被害額の認定も問題となりそうだ。あるいはコノコフィリップスのミスということで責任を押しつけるというシナリオもあるのかもしれないが……。