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2011年07月08日
■違法マンション問題が表面化するまで
湖南省永州市冷水灘区竹塘小組では、2007年から正規の認可を得ていない違法マンションの建築が始まった。竹塘小組の村民・熊運軍が企業と手を組んで開発しているもので、1棟あたり800~1200平方メートルもの用地を使う大型マンションが約10棟も建設されていたという。
用地は竹塘小組の農民共有地に建てられたもので、村民には毎年利用料が支払われる約束だった。つまり、当初は村民も共犯関係にあったが、使用料が支払われなくなったことで対立し、市当局に通報するなど建設を妨害するようになった。
市当局が動いたことで、違法マンションの建設はストップし、いまだに完成していないという。そのため、熊は、村民の抗議運動を主導した竹塘小組組長の周炳文を恨むようになったという。
■引田天功ばりの脱出
6月2日、周組長は熊に呼び出された。すると、車でやってきた熊とその仲間に拉致されてしまった。内陸の湖南省から移動すること2日間、6月4日に車は福建省泉州市石獅市に到着した。周組長は目隠しされた上に体をしばられ、さらに石までくくりつけられた後、海の中にどぼんと落とされてしまった。
絶体絶命の危機だが、幸運にもくくりつけられた石が滑って外れたという。あとは体をしばっていた針金や縄を歯でかみついて外し、周組長は九死に一生を得たのだった。
■村の権力者・熊一族
新京報の記事には、永州市国土局冷水灘支局執行大隊の蒋琳琳隊長のコメントも掲載されている。この違法マンションは事情がきわめて複雑で、なかなか解決ができないというのが同氏のコメント。第一に違法マンションの権利者が50人以上いるが、その中には「違法マンション許してよ。完成させてもいいっしょ」と上級部局に陳情している人もいるのだとか。
さらに違法マンション建設を主導した熊運軍の熊一族は村内で強い権力を持つとのこと。認可なしの違法マンション建設は確かに違法だが、よくあることだし摘発は難しいと及び腰。
さらに熊運軍の弟・熊運剣のコメントも掲載されているが、これがちょっと面白い。
「アニキは外地で100万元(約1250万円)以上だまし取られちゃったの。で、この違法マンションで損を取り戻そうと考えていたんだよね。村には共有地は先に使ったやつが自由にしていいという慣例があるし。」
「でも、当局が動いて建設がストップしちゃった。で、また60万元(約750万円)も損をしちゃった。周が通報したのを知っていたし、それでかっと来たんだね。ま、アニキがこうなったのも自業自得。衝動的すぎるね。責任とんないとねー。」