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ベトナム人は中国人とは違う、恨みを水に流す=ベトナム人が見た中越関係―北京で考えたこと

2011年07月11日

「親中国」ベトナム人識者が語る中越関係

先日、記事「【南シナ海問題】ベトナム人が語る中越関係=尖閣諸島から南沙諸島へ」で、ベトナム人識者Vu Cao Phan(漢字に直すと武高潘)氏の発言を紹介しました。

背景や私の考えについては上述記事に書きましたが、せっかくですので、ベトナムメディアに掲載された発言の(ほぼ)全訳を残しておこうと思います。
(原文はこちらのリンクから。本人は中国語には自信が無いということで、ベトナム語から中国語に訳されて放映されたそうです。)

20110704_vu_cao_phan
*Vu Cao Phan氏は電話インタビューという形で出演。でも各国からのあふれる出演者の前に、
取り上げられたメッセージはごくわずか・・・。こちら土豆網から番組が見られます。


*当記事はブログ「北京で考えたこと」の許可を得て転載したものです。


Vu Cao Phan氏は現在、越中友好協会の副会長。過去には軍人だったこともあり、また元国防学院講師、教育訓練省大臣秘書という経歴を積んでいます。紹介する発言は鳳凰TVに答えたインタビューですが、本人が「中国に向けたメッセージだったが、ベトナム国内からの反響が多くてびっくりした」と述べるほど、ベトナム国内からの反響が大きかったもようです(ベトナムの大手ネットニュース・VN Express参照)。

下記のインタビューからは、自らを「親中国」と語るVu Cao Phan氏の「両国はもっと理解し合って欲しい」というメッセージが伝わってきます。

この南シナ海での領土問題を、今起きていることだけで論じていては視野が狭過ぎる。ここ数年で中国側に捕まるベトナム漁船の数はどんどん増えている。捕まれば、網は没収され罰金を要求される。今年だけで捕まった漁船は100艘に達しているだろう。

捕まった夫や子どもの帰りを、海岸で泣きながら待つ女たちの姿を見て、ベトナム世論がどれほど怒ったかを中国人は知らないだろう。

今回の南シナ海問題だが、中国側がより過激な行動に出たため、ベトナム側もついに強硬な態度をとるようになったというだけ。何も驚くことはない。もし、ベトナムが中国を脅すような言動をとっていると思うのであれば、皆さんがこういった背景を知らないだけだ。


鳳凰:解決方法は武力か交渉か?


ベトナムではこの質問はほとんどあり得ない質問だ。ベトナムは確かに20世紀を通じて戦いをしてきた歴史を持つが、この領土問題によってベトナムと中国が戦争をすると考えている人はほとんどいないと思う。私個人も平和的に解決されると思っている。

両国間がそう合意していること、両国が文革(中国)、戦争(ベトナム)後に経済発展を優先してきていること、また成熟した国際社会の世論がそれを許さないこと、などからだ。また、仮に両国の指導者が少し熱っぽくなり理性を失ったとしても、庶民が戦争を望まないからだ。そうだろ、あなた(鳳凰TV記者)は今戦争をしたいと思っているかい?もちろん、小さないざこざは起きるかもしれないが。


鳳凰:問題の本質は経済問題か、主権の問題か?


面白い質問だ。両方が混ざっていると言えるが、中国にとっては経済、ベトナムにとっては主権の問題により近い。それが、ベトナムが「主権問題を棚上げにして共同開発」という提案に熱心でない理由だ。資源は有限であり、それが開拓し終わったらどうなるのか?鄧小平の発言全体は「我々の領土であるが、主権問題を棚上げにして共同開発」であり、資源開発が終わった時に残るのはやはり主権問題だ。共同開発には賛成できるが、その前に(完全にでなくとも)一定程度の主権問題に区切りをつけなければならない。

質問に戻れば、私に言わせれば問題の本質は政治である。中越関係は平穏であったことは無かった、今回の南シナ海領土問題以前にも。両国のリーダーが腰を据えて、両国友好の希望に基づいて話し合うことだ。


鳳凰:中越友好を実現するにはどうしたら良いか?


私は長らく中越友好のために働いてきた人間で、「親中国」と言っても良いだろう。両国の友好を願う立場から何点かお答えする。

一つには二国間対話。ただ、南沙諸島(訳注:スプラトリー諸島)は既に多くの国が主権を主張しているわけだから多国間の場で議論すべきで、西沙諸島(訳注:パラセル諸島、現在は中国が実行支配中)のように中国とベトナムだけの問題とは違う。ただ、中国自身が「これは我々の領土である」と宣言してしまって議論の余地をなくしてしまっている。それでは「二国間対話」の扉を閉ざしてしまっているではないか。南沙諸島の問題は尖閣諸島と非常に似ている。このような問題に本質的に応用できる原則のようなものはないのだろうか?

もう一つは両国の文化の問題。中国は常に強い姿勢を好むが、ベトナムは柔らかい対応を好む。恩は忘れないが、長く恨むことはしない。例えば、中国は事ある毎に南京大虐殺や盧溝橋事件を持ち出してはデモを行ったりする。ベトナム人はそういうことはしない。

日本軍は1945年にベトナムを占領し、100万人単位のベトナム人が餓死する事件を引き起こした。65~75年には、アメリカや韓国の軍隊がベトナムでひどい悪事を働いた。しかし、彼らがベトナムに戻ってくれば、それを笑顔で迎える、その態度が彼らを仲間にし、今では最大の経済支援国にまでしているのだ。

もうひとつ例を挙げれば1979年2月の事件(戦争と言うこともできるだろう)。ベトナム人は忘れたいと思っているのに、ことあるごとに中国人は取り上げる。2009年当時、自分も忘れていたが、あなたたちが30周年と称して、2月どころか、2009年中その話題をし続けるから……。

何百本の文章が書かれ、ネットに載った。それを読むと私は泣きたくなった。本当に心ない言葉もあったからだ。もう水に流そうじゃないか。

両国関係はその文化、歴史の類似性、或いは隣国であることから特別なものだ。共に大きな災難に見舞われたこともある(私自身も昔は軍人として戦った身だから、中国がベトナムに武器や食糧を支援をしてくれ、それを直接使ったことを忘れない)。両国は今まさに同じように改革開放、経済建設を続けている、これだけ取ってみたってその関係が特別なことと言える。

両国の政治体制やイデオロギーが類似しているということもある。ただ、あくまで個人の意見ではあるが、この点ををそれほど強調する必要はないのではないか。戦争や衝突は国家利益で起きるもので、イデオロギーが似ていても起きることはあるからだ。それに、いつの日か、もしどちらかの国の政治体制が変わったとしたらどうするのか。その時には友好は必要ないのか?もちろん必要だ。

私は皆さんと一緒に両国がより理解し合えるように努力していきたいと思う。

*当記事はブログ「北京で考えたこと」の許可を得て転載したものです。


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 コメント一覧 (3)

    • 1. 信太
    • 2011年07月11日 23:14
    • 非常に分かり易く、共感しる内容です。
    • 2. あひ
    • 2011年07月12日 01:34
    • >日本軍は1945年にベトナムを占領し、100万人単位のベトナム人が餓死する事件を引き起こした。

      ここだけちょっと気にかかりました。

      下記リンク先を見ると日本の責任とは断定出来ないようです。
      もちろん今更真実はわかりませんが。
      http://home.att.ne.jp/blue/gendai-shi/others/200-gasi-jiken.html
    • 3. Chinanews
    • 2011年07月13日 15:45
    • >あひさん
      コメントどうもです。リンク先も読ませていただきました。

      戦中の混乱もありますし、その後にできた政権のプロパガンダということを考えても数字的な正否ではいろいろ問題点はありそうですね。

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